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板絵着色雲竜図(天井画)

更新:2011年5月18日

下谷神社
平成11年度登載

 上野駅に程近い、大鳥居が印象的な下谷神社に、縦174センチメートル、横296センチメートルの竜の天井画があります。作者は、日本近代画の巨匠、横山大観です。
 湧き立つ雲の中に突如として現れる竜を描いた水墨画で、迫力あふれる作品です。竜の体の輪郭は、強いタッチの墨線で表現され、筆先がかすれていることで猛々たけだけしい竜の雄姿が一層際立っています。これに対して、渦巻き状の雲や竜のうろこは、淡い墨で描かれ、竜の後頭部から流れる雲や右腕及び左足の付け根、髭<ひげ>、眼、爪など細かいところに胡粉ごふん金泥きんでいをまじえて比較的やわらかく仕上げています。
 画面左下に墨で「昭和甲戌之春 大観」と記され、鉦鼓洞主しょうこどうしゅという印章があります。昭和甲戌は、昭和9年の干支をあらわしたもの、鉦鼓洞主とは、台東区池之端の横山大観邸における客間「鉦鼓洞」の主、つまり大観その人を指す画号です。
 横山大観(1868〜1958)は、東京美術学校第一期生として入学し、谷中における前・後期日本美術院の発展に尽力し、池之端の自宅で数多くの名作を生み出しました。昭和32年には、台東区名誉区民第1号の称号を贈られるなど、台東区にとって忘れてはならない人物です。
 下谷神社は、かつては下谷稲荷社といっていましたが、明治5年に神社名を「下谷神社」と改め、現在に至っています。関東大震災のときには、社殿がすべて焼け落ちてしまいましたが、昭和6年再建のための工事を起こし、同9年には完成しました。現在の建物はこの当時のものです。
 雲竜図は、このときの改築に際して、池之端茅町かやちょう(現、池之端一丁目)に住んでいた大観が、筆をふるったものです。制作に当たっては、下絵を作製し、それを天井に貼りながら、全体の調子を整えたといわれており、意欲的に描かれたことが知られます。
 大観は、この2年後に描いた龍蛟躍四溟りゅうこうしめいにおどる(宮内庁三の丸尚蔵館蔵)など、本図に似た竜図を多く手がけています。本図は、大観の描く典型的な竜の特徴を備え、代表作生々流転せいせいるてん(国立近代美術館蔵)などにもその片鱗は見受けられます。このことから、大観の竜図は、大正から昭和初期に確立したと考えられ、本天井画はその時期に当たっており、貴重な作例です。

板絵着色雲竜図
板絵着色雲竜図

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