区長所信表明

項目

1 はじめに
2 台東区基本構想について
3 まちづくり推進について
4 観光バス対策について
5 地方との交流について
6 平成29年度予算案について
■元気な地域産業と商店街の創造に向けた取り組みについて
■快適で安全・安心なまちの創造に向けた取り組みについて
■人情あふれる福祉と健やかな暮らしの創造に向けた取り組みについて
■家庭の絆を大切に、子供の豊かな未来の創造に向けた取り組みについて
■歴史と文化が薫る、魅力ある国際文化観光都市の創造に向けた取り組みについて
7 台東区発足70周年記念事業について
8 おわりに


代表質問の概要

代表質問とは

各会派の代表者が区長提出議案や区長の政治姿勢に対し、質問を行うことです。


たいとうフロンティア

木下 悦希

将来のまちづくりにおける公共施設のあり方について

 国内外の政治や経済の先行きが不透明な状況の中、将来のまちづくりの方向性を示すことが重要である。また、将来の行政経営を見通す際に、最も重要な要素は人口動態であると考える。こうした視点で公共施設のあり方を考えたとき、本区の人口は、約30年後まで緩やかに増加すると推計されており、人口増に伴う区民ニーズの増加や変化により、公共施設に求められるニーズと現在の施設の設置目的や規模との間に差異が生じる可能性がある。また、公共施設の老朽化対策は、区財政に大きな負担となるが、区民ニーズの増加の点からすぐに統廃合に取り組むことは困難であり、計画的に長寿命化を図ることも必要である。このように、将来のまちづくりを考えるにあたり、公共施設の見直しは、中核ともなり得る重要な課題である。中長期的な視点に立った公共施設のあり方について、どのように考えているか。

 区では、行政需要に合わせ、公共施設を設置してきたが、公共施設に求められる機能は、人口構成や区民ニーズの多様化などにより、変化していく。また、経年劣化による施設等の老朽化が進んでいる。このような課題に対応するため、経営的視点をもって、総合的かつ計画的な施設の維持・保全に努めており、改築の際には、必要な機能を維持しながら、他施設との統合や新たな機能の付加による複合化・多機能化を図っていく。また、区民ニーズや将来的な人口減少も見据えて、将来のまちづくりにおける公共施設の役割を踏まえつつ、中長期的な視点から施設の再編も含め、公共施設のあり方を検討していく。

区の表彰制度について

 1 本年10月に開催される70周年記念式典では、より一層、祝賀ムードを盛り上げていくためにも、顕著な功績のあった方々に対して、区からの感謝の意と敬愛の気持ちを表すことを目的とする表彰式等を行ってはどうか。2 本区には様々な表彰制度があり、区政運営には欠かせないものである。各分野で顕著な功績のあった個人や団体を表彰することで、活力ある地域社会を醸成していく表彰制度の成果は、十分に評価している。しかし、例えば、名誉区民は昭和32年に、区政功労者表彰は昭和40年に制度化され、既に50年以上の伝統を有するものとなっており、区政に対する功労や優れた行いを顕彰する重要な制度として定着しているが、社会経済情勢の変化とともに、区民の活動も様々な分野に及んでいることから、時代の流れに即した表彰制度にすることも必要であると考える。区の表彰制度を見直し、区民にとってより大きな励みとなるような制度にしていくべきではないか。

 1 70周年記念式典では、例年実施している区政功労者表彰をはじめ、主にこの10年の間、区政に特別な功績があった方への勲功区民表彰と、様々な分野で区政に協力いただいている方々へ感謝状の贈呈を行っていく。2 区の表彰の多くは、制度化されて数十年が経過し、歴史と伝統のあるものとなっている。一方、区民の活動が多様化する中、様々な分野で活躍している方に対し、感謝の意を込めて表彰することも重要であると考えている。表彰は、受章する方にとって人生の節目の一つであることに思いを寄せつつ、現行制度の意義や経緯を十分に踏まえ、区民にとって一層の励みとなる表彰制度に向け、検討していく。


台東区議会自由民主党

寺井 康芳

基本構想について

 本区を取り巻く経済情勢の大きな変化や、服部区長による新たな区政運営が始まったことを鑑み、区民に区政運営の新たな道標を示す必要がある。区長は今定例会の所信表明において、新たな基本構想の策定を表明したが、どのような決意をもって取り組むのか。

 区長就任以来、様々な施策を展開してきたが、安全で暮らしやすいまちづくりなど、長期的視野に立って取り組むべき課題が山積しており、将来を見据えた新たな方針のもと、区政を展開していく必要がある。また、現在の基本構想は、策定から10年以上が経過し、人口の増加、経済のグローバル化など、本区を取り巻く環境も大きく変化している。そこで、本区の更なる発展のため、本区の将来像を描く新たな基本構想を策定していく。区民の誰もが誇りを持ち、安心して暮らし続けることができるまちの実現に、全力で取り組んでいく。

今後の都市計画・まちづくりについて

 1 現在、策定作業中の都市計画マスタープランでは、まちの将来像が描かれていくと考えるが、本区をどのように見据え、どのような方向へ導こうとしているのか。2 29年度の新規事業として「上野地区まちづくり推進」、「北部地区まちづくり推進」があるが、課題が山積するこれらの地区において、それぞれどのようなイメージを描いているのか。

 1 都市計画マスタープランは、基本構想に即したものと位置付けられているため、新たな基本構想の策定とあわせて基本理念を定め、各地域にふさわしい将来像を描くとともに、実効性の高いものとしていく。2 上野地区については、上野の山文化ゾーンと上野の持つ多様性をどう描いていくかが重要である。来年度は、この具現化に向けて、「(仮称)上野地区まちづくりビジョン」の検討を進めていく。北部地区については、防災性の向上や来街者の受け入れ促進といった喫緊の課題解決に向けて、来年度は不燃化建替えの促進や簡易宿所への助成事業の充実を図っていく。そのうえで、北部地区まちづくりは、来街者に魅力的なまちをイメージして進めていくため、調査を実施し、将来像とその実現に向けた方策を検討していく。

待機児童対策と保育士確保策について

 1 待機児童解消のため、保育所等の整備を進めているが、待機児童数の増加が続いている状況である。29年度は、新たに認可保育所を9か所整備するとしているが、この整備数はどのような考えのもと設定され、どのように整備していくのか。2 保育士の確保は、保育の質に大きく影響する。本区の子供たちのために、心を尽くし働いてもらえるような人材を確保する必要があるが、保育士が安心して保育に打ち込めるための支援について、どのように考えるか。

 1 29年度の整備数については、現在の申請者数と32年度の就学前人口のピークを見据え、必要な保育定員を確保したいと考えたものである。施設の整備については、平成30年4月の開設を目指し、保育運営事業者を支援し、確実に進めていく。2 保育の質は、従事する人材が大きな鍵を握っているため、保育従事者がより安定して働けるよう、従事者と事業者に処遇改善等の支援をしてきた。今後も、子供たちの健やかな育成に力を尽くす人材を確保できるよう、安心して働きやすい環境づくりや、研修機会の確保などの支援策を検討していく。


台東区議会公明党

小坂 義久

「区制70周年」と今後の台東区について

 1 本年、区制70周年を迎える本区の行政課題とは何か。また、解決に向けてどのような一年にしていくのか。2 上野・浅草以外の地域の魅力をどのように発信していくのか。また、台東区という地域ブランドを、国内外へ更に知らしめていくべきではないか。3 国際文化観光都市として一層の飛躍を遂げ、日本の活性化に寄与する成果を全国へ波及させるため、地方との更なる連携の推進が大切ではないか。

 1 大規模災害への備えや外国人観光客への対応等、課題は山積しており、これらに対応するため、新たな基本構想の策定に着手していく。本区が輝く都市であり続けるよう、引き続き全力で区政に邁進していく。2 台東区観光振興計画において、多彩な魅力の発信を掲げ、国内外へのシティセールス等を行っている。今後も魅力的な地域資源を掘り起こし、情報発信の強化により、地域ブランドの向上を図っていく。3 鉄道路線でつながる地方都市との連携により、広域観光ルートの確立を推進している。区内では、様々な自治体の情報発信等により商店街の活性化を図るため、ふるさと交流ショップを新設する予定である。今後とも本区の資源を生かし、様々な連携に取り組んでいく。

平成29年度予算案について

 29年度一般会計当初予算案は、特別区交付金の減少を見込む中、様々な行政需要が増加するなど、過去最大の予算規模となったが、どのような思いで予算を編成したのか。

 区民が安心して暮らせることを第一に考え、待機児童対策等の様々な区民サービスを充実している。更に、基本構想の策定等の取り組みとともに、行政計画に基づく事業へ重点的に予算措置を行った。「躍進台東 新しい台東区」の実現に向けて、より一層力強く飛躍できるよう、全力で取り組んでいく。

「支え合いの共生社会」の実現に向けて

 1 本区における介護・保育人材の現状と課題、課題の解決に向けた取り組みについて、所見を伺う。2 妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援が複合的になりつつあるため、ワンストップで相談を受けられる体制づくりに向け、子育てアシストを生かしていくべきではないか。3 高齢者の豊富な知識等を地域などで生かして活躍してもらうことは、本人のみならず、区にとっても大きなプラスになる。そこで、高齢者を福祉の担い手として登用し、働き続けられる環境づくりに取り組むべきではないか。

 1 実態調査によると、多くの事業者から介護職員等の質・量は充足していないとの回答があり、人材確保や育成が重要な課題である。区では、職員の負担軽減に向け、介護ロボット導入経費の助成等、事業者を支援している。保育人材も、担い手が不足しており、人材確保が喫緊の課題である。その対策として、区では研修の支援等を行っている。今後とも国や都とともに、福祉人材の確保等に取り組んでいく。2 本庁舎に子育てアシストとして相談員を配置し、専門窓口の案内等、幅広い情報提供や保健所の出張育児相談に同行している。今後、子ども家庭支援センターにおいても、定期的な相談日の設定など、活動の場を広げていく。3 シルバー人材センター等を通じた高齢者の働く場の確保や、今年度から開始した家事援助サービスにより、就業機会の拡大を図っている。地域共生社会の実現を目指し、高齢者が積極的に活躍できるよう取り組んでいく。


つなぐプロジェクト

冨永 龍司

都市再開発について

 本区の更なる発展には、土地の高度利用による有効活用や密集住宅市街地における防災機能強化の再整備等、より一層の機能性や居住性の向上、安心・安全で魅力あるまちづくりの推進が必要であり、そのための手法の一つに再開発事業がある。豊島区では、旧庁舎跡地等を市街地再開発事業により整備することで、多くの集客と経済波及効果を見込んでいる。本区においても、現在策定中の都市計画マスタープランの中で、必要とあれば都市再開発を行っていくべきと考える。今後のまちづくりでは、それぞれの地域の実情に合った再開発が必要ではないか。

 これまで本区では、東上野2丁目や御徒町駅西側の土地区画整理事業による街区の更新があったが、都心部のような大規模な再開発は行われていない。今後のまちづくりにおいては、商業又は業務用途等の誘導や、防災性及び回遊性の向上を目的に、大きな街区における建物の更新も必要である。各地区のまちづくりを推進していく上では、土地の高度利用や、街並みの景観を生かした整備等、それぞれの地域特性に見合ったまちづくりの手法を検討していく。

義務教育について

 1 文部科学省は、32年度以降、順次小・中学校で新しい学習指導要領を実施すると公表した。時代とともに改訂されている義務教育の目的は、国民が社会に出るために共通に求められる最低限の基盤的な資質の育成である。しかし、近年では、いじめや保護者の価値観の多様性による家庭教育の低下、貧困問題による学力格差等、学校に求められる課題が広がってきている。子供たちの未来のためにも、しっかりとした義務教育を受けさせる環境作りが必要であるが、本区の義務教育の更なる充実について伺う。2 学校教育制度の多様化及び弾力化を推進するため、小中一貫教育を目的とする義務教育学校の制度が創設され、教育委員会等の判断により、既存の小・中学校などを義務教育学校にできるようになった。文部科学省の調査によると、小中一貫校では、中学校への進級時に環境の変化に適応できず、様々な面で後れを取るといった、いわゆる中1の壁の解消への効果などが示された。一方、子供たちの中の固定的な人間関係が9年間続く可能性があり、今まで以上に配慮が必要になるなどの問題があげられている。そこで、小中一貫教育のメリット及びデメリットを検証すべきではないか。また、今後の小中一貫教育の推進について伺う。

 1 学校教育では、子供たち一人一人の学力の基礎・基本の確実な習得に重点を置いた取り組みを行っている。また、学校においては、子供たちに安全で安心な教育の場を提供していくことも重要であり、指導の徹底を図っている。学校の教育力は教員の資質・能力の向上にかかっており、教員研修や学校現場での指導・助言を充実させていく。また、地域と学校の密接な連携により、地域に開かれた学校づくりを更に推進していく。2 小中一貫教育に関する実態調査によると、中1ギャップの緩和などの成果が示されている一方、デメリットとして、小・中学校の教職員間の打ち合わせ等の時間の確保を図ることなどの課題も報告されている。今後も、他区や先進校の動向を注視するとともに、メリット、デメリットを含め、推進状況を把握し、研究を進めていく。


日本共産党台東区議団

秋間 洋

憲法を遵守することについて

 区長は平成27年第2回定例会において、自らの憲法遵守義務を認めたが、同じ行政の長として、安倍首相に対し改憲を議会に働きかけるべきではないと進言するつもりはないか。

 憲法を改正する場合には、憲法の規定に基づき、国民の承認を経る手続きが必要であり、今後、国会において広く議論されるものと考えている。

基本構想の背景にある区民生活について

 来年度に策定する基本構想の土台となる区民生活の現状をどのように認識し、区政運営にどのように影響を与えると考えるか。

 本区の中小企業は、業種によっては業況が厳しさを増しているなど、区民生活は依然として厳しい状況にある。この認識のもと、誰もが安心して暮らせるよう、様々な施策を展開し、区政運営を推進していく。

くらし優先の財政運営への転換について

 基金を積み増しばかりするという姿勢ではなく、区民のくらしや福祉、中小事業者の営業のために使う財政運営に転換すべきではないか。

 財源不足の際も基金の活用などで区民サービスの水準を維持し、新たな財政需要に対応してきた。いかなる経済状況にあっても、基金等を有効に活用し、安定的な財政運営に努めていく。

いじめ問題への認識について

 1 いじめの深刻化の原因はどこにあると考えているか。2 台東区いじめ防止対策推進基本方針や中学校選択制度など、本区の方針を見直す考えはあるか。

 1 いじめが複雑化し発見が難しくなっているとともに、教員の認識の甘さ等が原因と考えている。2 今後も、教育委員会と学校園がより一層連携し、台東区いじめ防止対策推進基本方針の徹底を図っていく。中学校選択制度の見直しは考えていない。

子どもの貧困への認識について

 1 子供の貧困対策は、重要な課題であるという認識はあるか。2 子供の貧困について本格的な調査を行い、計画を作る意思はあるか。

 1 子供の貧困対策は、大変重要なものと考えており、次世代育成支援計画に多くの事業を位置付け、実施している。2 今年度、児童扶養手当の現況届提出時に生活状況の調査を行った。その結果を踏まえ、就労の促進等、新たに予算を計上している。引き続き、子供の貧困対策についても、計画的な推進を図っていく。

憲法が要請する教育の目的について

 1 教育長自身が憲法を擁護する義務を負っていると考えているか。2 憲法が要請する教育の目的とはどういうものだと考えているか。

 1 憲法遵守は当然のことと考えている。2 教育基本法が定める、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として、必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成である。この目的の実現に向け、教育目標等に基づき、教育行政の推進に努めている。

新教育長の下での教育委員会の役割について

 1 教育委員会は教育行政を進めていく上で、どのような存在と認識しているのか。2 新教育長の下、教育委員会を教育における住民自治発揮の機関として生かしていく意思はあるか。

 1 独立した合議制の執行機関として、教育の政治的中立性の確保や地域住民の意向の反映等の機能を果たしてきた。この役割は、現在においても何ら変わらないと考えている。2 新制度においては、教育委員会における責任の所在が明確化されるとともに、自治体の長との連携が一層強化されたが、引き続き十分かつ活発な議論に基づき、教育委員会の責任と権限において、教育行政の管理・執行に努めていく。