区長所信表明

項目

1 はじめに
2 江戸の魅力の継承と未来への発展について
3 おもてなし環境の整備について
4 平成30 年度予算案について
   ■ 元気な地域産業と商店街の創造に向けた取り組みについて
   ■ 快適で安全・安心なまちの創造に向けた取り組みについて
   ■ 人情あふれる福祉と健やかな暮らしの創造に向けた取り組みについて
   ■ 家庭の絆を大切に、子供の豊かな未来の創造に向けた取り組みについて
   ■ 歴史と文化が薫る、魅力ある国際文化観光都市の創造に向けた取り組みについて
5 住宅宿泊事業について
6 おわりに


代表質問の概要

代表質問とは

各会派の代表者が区長提出議案や区長の政治姿勢に対し、質問を行うことです。


台東区議会自由民主党

石塚猛

定年年齢引き上げと職員の人材活用について

 地方公共団体における28年度の再任用希望者は、ほぼ全員採用されており、年金支給開始年齢の引き上げに伴う、雇用と年金の接続に向けた着実な取り組みがなされている。また、国は、公務員の定年の引き上げについて具体的な検討を始めている。そこで、次の2点について伺う。1 本区における再任用制度による人材活用はどのような状況にあるのか。2 今後の定年年齢引き上げの動きにどのように対応していくのか。

 1 本区では、定年退職者等を対象に再任用制度を実施しており、再任用希望者は、過去5年間は6割台で推移していたが、29年度は8割を超え、全員を採用している。本人の実績等も勘案しながら、適材適所に配置している。2 国は、地方公務員の定年を3年ごとに延長し、15年後には65歳とする方向で検討に入っている。組織の活力を維持していくには、優秀な人材の確保と長期にわたる活用が重要な課題であり、今後とも、職員の能力と経験を有効に活用しながら、士気を維持し、持てる力を最大限発揮できるよう努めていく。

保育園と特別養護老人ホームについて

 利用していない公有地や空き地を活用し、保育園と特別養護老人ホームを併設した施設を整備することで、双方の待機者問題の改善につながるとともに、世代間交流を促し、地域全体で高齢者や子育てを支えていくことができると考える。高齢者が子供に関わることで生きがいを感じたり、子供にとっても福祉の心を育むきっかけとなる併設型施設の整備を検討すべきではないか。

 子供と高齢者の交流は、双方に良い効果があるため、区内の特別養護老人ホームでは、近隣の小学校や幼稚園の子供たちが訪れ、歌や劇を披露するなどの交流をしている。他自治体では、保育園が併設された特別養護老人ホームの整備事例もあり、利用者の精神面や身体面に良い刺激を与えていると言われている。保育園と特別養護老人ホームの併設については、敷地面積等の課題はあるが、施設のあり方の一つとして研究していく。

江戸ブランドについて

 江戸から明治に改元されて150年の節目である本年、区長は江戸ブランドを活かしたシティプロモーションを進めていく考えを示しており、国や都、関係機関と連携しながら積極的に推進すべきと考える。そこで、次の3点について伺う。1 シティセールスやまちづくり等に、江戸をどのように活かしていくのか。2 江戸を活かした取り組みは、地域や区民にどのような効果があるのか。3 庁内体制も含め、今後どのように具体的な施策を進めていくのか。

 1 江戸時代の暮らしや芸能・文化等の講座、墨田区との連携協定によるシンポジウム等を実施し、更に、江戸ブランドによるシティプロモーション等により本区が有する江戸の魅力を国内外に発信するなど、江戸を活かした取り組みを推進していく。2 本区の歴史・伝統文化を後世に継承し、また、江戸の優れた面を学ぶことで、区民の郷土への誇りと愛着をより一層深めていけるものと考えている。また、これまで培われてきた技能等を活かし、産業や観光などの振興を図り、更なる地域の活性化につながると考える。3 「明治150年」という絶好の機会を逃すことなく、全庁的な体制により、具体的な取り組みを進めている。また、都の事業との連携を進め、関係団体の協力を得ながら事業を実施していく。


たいとうフロンティア

水島道徳

財政運営と地方分権について

 1 30年度の一般会計予算は、過去最高の1,000億円を超え、本区の更なる躍進につながると考える。一方、少子高齢化といった人口問題や、子育てしやすい環境づくりなど様々な行政需要の増加、また、法人住民税の一部国税化等、不合理な税源偏在是正措置の加速化などにより、更なる財政負担の増加も見込まれる。そこで、今後の財政運営の展望について伺う。2 都と特別区は、国に対する不合理な税源偏在是正措置への要請などで共同して行動する一方、都市計画交付金の配分や児童相談所の移管等、協議がまとまらない事案もある。また、特別区長と都知事との意見交換会においても、都区が連携して取り組むべき重点課題として様々な意見が出された。そこで、地方分権及び発展的に区政運営を推し進める上で、都に対する姿勢について伺う。

 1 将来人口推計によると、本区の人口は当面緩やかに伸びていくことから、今後も子育て支援や高齢者・障害者などのための社会保障経費をはじめとした義務的経費の増加が見込まれる。また、区有施設の計画的な大規模改修等による投資的経費も継続的な財政負担となる。一方、歳入においても、国の税源偏在是正措置の加速化が今後の財政運営を圧迫することが懸念されている。このような厳しい財政状況が続くと予想される中、区民が安心して生活できるよう、基金や特別区債も有効に活用しながら、中長期的な視点に立った安定的な財政運営を推進していく。2 これまでも、都とは産業、まちづくりなど区政のあらゆる分野で連携を図る一方、都区の役割分担に関する協議の実施や、都市計画交付金制度の改正等について、区の考え方を主張して協議を行っている。今後も、都と意思疎通を図りながら区政を展開していくとともに、本区が基礎的自治体としての責務と役割を十分に遂行できるよう、更なる権限と財源の強化に向けて取り組んでいく。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への対応について

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が近づく中、日本全国で選手団の誘致運動や大会の成功に向けての機運が高まっている。墨田区では東京2020大会を契機とした区の活性化に向けて、区民、区内の各種関係団体等が連携して取り組みを推進する、墨田区オリンピック・パラリンピック地域協議会を設置した。そこで、本区においても大会スポンサーや、町会等区内の様々な団体が参画する協議会を設置し、東京2020大会に向けた機運醸成を進めていくべきではないか。

 東京2020大会は、本区の活性化や更なる飛躍につながる絶好の機会であり、本区の魅力の一層の向上を図るため、平成28年にスポーツや文化など5つの分野にわたる取り組み方針を策定した。その一つとして、来街者をおもてなしするよう、商店街と協働し、ハンギングバスケットを設置するなど、花の心プロジェクトを推進している。また、多くの方に障害者スポーツの魅力を紹介する体験会の開催や、区内の文化・芸術に関する取り組みを国内外へ発信する文化発信プログラムの展開など、様々な施策を着実に進めている。区民及び区内団体と連携して機運醸成などの取り組みをより一層進め、その成果をレガシーとして、地域の活性化等につなげていくことが必要であると考えており、会議体の設置について検討していく。


台東区議会公明党

寺田晃

人材への投資による区民が輝く地域社会の構築について

 少子高齢化や人口減少が進む中、区民の誰もが活躍し、世界に冠たる台東区としてますます輝くためには、働く方、働きたい方、学びたい方など、あらゆる方への人の投資が重要である。待機児童を解消し、働く母親が活躍できる環境整備、再就職のために学び直しができる環境整備等を力強く進め、台東区に来てよかった、住んで、働いて、学んでよかったと、区民の誰もが活躍し、笑顔になれる地域社会の構築を目指すべきではないか。

 これまでも区民の生活を第一に考え、山積する課題に的確に対応し、誰もが安全で安心して暮らし続けられるまちの実現に向けた取り組みを推進している。今後とも、区民の多様なニーズを把握しながら様々な施策を展開していく。

地域包括ケアシステムの強化について

 第7期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画では、地域包括ケアシステムの強化に重点を置き、生きがいづくりを施策に加え、支え合う共生社会を目指している。地域包括ケアシステムの強化のためには、地域の代表を含めた地域ケア会議の実施や、本区ならではの特性である互助の力を活かした、区民の活躍による支え合いのまちづくりの構築が必要と考えるが、今後、どのように地域包括ケアシステムを強化していくのか。

 地域包括ケアシステムの構築に向けて、介護予防の推進による高齢者の元気づくりをはじめ、認知症への対応等に取り組んできた。第7期計画では、高齢者やその家族からの多様化・複雑化する相談に応じるため、総合的な相談支援体制の強化をはじめ、買い物等、様々な生活支援ニーズに対応するサービス等の充実を図っていく。今後も住み慣れた地域で安心して生活を送れるよう、地域全体で支え合う地域包括ケアシステムの強化に積極的に取り組んでいく。

障害者施策の充実と人間性輝く人権施策について

 1 第5期障害福祉計画の中で、要となる重点課題が権利擁護の推進であり、障害者差別解消法の認識が広まることで、その他の重点課題も解決し、対策も進むものと実感している。今後、どのように障害者権利擁護施策を充実していくのか。2 本年は、世界人権宣言の採択70周年の節目であり、その意義を再確認すべきである。インターネットでは、利用者が好む情報だけが集まり、正しい判断ができなくなると警告される中、偏見や差別を克服する発信力を備える青年層に対して、人権教育を実施すべきと考える。また、将来は人権擁護条例や行動計画等の制定も必要と考える。全ての区民が光り輝き、喜びを共有できる社会の構築が望まれるが、今後、どのように人権施策を進めていくのか。

 1 第5期計画の中で権利擁護の推進を重点課題の一つとして掲げ、障害者差別解消法を理解するための講演会等を開催するほか、各団体の研修会等の機会を活用し、情報発信を行っていくこととしている。今後も様々な機会を通じて法の周知等に努めるとともに、虐待防止等の施策の充実により、障害者の権利擁護の着実な推進に取り組んでいく。2 国の計画等に基づき、区民が人権課題を理解し考えるきっかけとなるよう、講座等を通じて、様々な人権課題の啓発に努めてきた。引き続き区民の人権に関する理解が深まり、人権尊重の理念が広がるよう、青年層を含む全ての世代に対する効果的な啓発に取り組む中で、条例、計画の必要性についても研究していく。


つなぐプロジェクト

早川太郎

財政状況について

 1 30年度一般会計予算案は、特別区税等の増収により1,000億円を超え、区政史上最高額の予算規模となった。しかし、法人住民税の国税化やふるさと納税の影響による減収、子育て支援施策や区有施設の維持管理等に見込まれる経費の増など、今後の財政運営には多くの課題がある。30年度は基本構想と長期総合計画を策定し、本区の明るい未来を切り拓くための新たなスタートを切る年と位置付けているが、今後の財政状況をどのように認識しているか。2 法人住民税の国税化や待機児童対策など、区の財政に多大な影響を与える国の政策についてどのように考え、対応していくのか。3 多様な行政ニーズに応えていくために、やる気やノウハウのある団体等との協働事業やクラウドファンディングなどの新たな手法等を含め、将来の厳しい財政状況を見据えた行財政基盤の強化を進めていくべきではないか。

 1 歳入では、更なる法人住民税の国税化など、今後も減収が予想される。歳出では、子育て支援等の扶助費など、増大する様々な行政需要を抱えており、本区の財政は、今後も予断を許さない状況にあると認識している。2 都市と地方の税源の偏在是正措置は、地方分権の流れに逆行するものであり、国に対し、特別区長会のもと、国が自らの責任で地方税財源の拡充を図るよう主張してきた。また、福祉、都市基盤等の施策や、国の制度に基づく施策の遂行のため、制度の改善や財政措置の充実強化を求めてきた。今後も、基礎的自治体の責任と権限に応じた財源を保障するよう、要請していく。3 今後も増加が見込まれる行政需要に対応するため、使用料等の見直しや区有財産の活用、事務事業等の見直しなどにより、歳入・歳出の両面で行財政基盤の強化を図ってきた。将来的な財政状況の変化に対応するための新たな取り組みについても、導入による効果や課題について、検討を進めている。今後も、より強固な行財政基盤の確立に向け、取り組んでいく。

情報活用・選択能力の育成について

 SNS利用者の増大などにより、真偽の混在する膨大な情報から必要な情報を選択する時代となり、「情報をどのように活用していくか」の能力が重要になってきている。情報の信頼性やメリット・デメリットを吟味・選択し、情報に基づく自分の行動には責任が伴うことなど、情報の活用や選択のリスク管理を身に付けることが必須である。情報活用に関する判断力や選択能力の育成など、次代を担う子供たちが急速に発展する情報化社会を生き抜くための課題や現状を、どのように認識しているのか。

 現在、子供たちを取り巻く環境は、インターネットやSNS等を通じた情報であふれている。また、情報の発信や受信方法も多種多様となっており、数ある情報の中から必要な情報を選択し、その信頼性について吟味する力を育成することも大変重要な課題である。学校では、子供たちがこうした社会を生き抜く力を育むため、セーフティー教室等で、情報リテラシーや情報モラルについての指導を計画的に実施している。今後も、子供たちが適切に情報を選択することや、情報をもとに行動する際には、様々な責任やリスクを伴うことについて理解を深め、これからの社会を豊かに生きていくことができるよう、指導の充実に努めていく。


日本共産党台東区議団

秋間洋

区長の憲法認識について

 1 憲法第9条の改正について、区長は議論の推移を注視するとしてきたが、戦争か平和かの重大な岐路に立つ今、改憲はすべきでないと内閣総理大臣に進言すべきではないか。2 区長は自らの憲法遵守義務を認めているが、この3年、憲法を壊す安倍政権に追従してきたのは、憲法を順守する姿勢とは矛盾するのではないか。

 1 憲法第9条の改正については、広く国民の総意に基づき進められるものであり、今後、改正の内容について国会で議論されるものと考えている。現時点では、引き続きこの議論の推移を注意深く見守っていく。2 自治体の長として、憲法遵守の姿勢は今後も一貫して変わることはない。

区長の区政運営の基本について

 1 区長は、所信表明において、区民の暮らしが良くなっていないことを認め、区民の生活を第一に考え、山積する課題に的確に対応すると決意表明した。(ア)それならばなぜ、今定例会において、国民健康保険料等の値上げを提案するのか。これ以上の負担増を区民に押し付けるべきではないと考えるが、どうか。(イ)中小企業や区民が景気回復を実感できない原因はどこにあると考えているか。政府の経済政策に原因があるのではないか。2 中小零細事業者と商店街の衰退は、防災、防犯、福祉、まちづくりを支える力の弱体化につながる。「躍進台東 新しい台東区」を進めるため、中小零細事業者等を最優先で救うべきではないか。3 (ア)介護保険法の住所地特例制度により、住民票を他自治体の施設に移して本区の介護給付を受けている方と生活保護受給者で都外の施設に入所している方を合わせると、1,000人を超す区民が区を離れざるを得ない状態となっている。介護が必要な身寄りのない低所得者等が、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができない現状について、どのように考えているか。(イ)住所地特例で区外へ住所を移した場合には、区内の特別養護老人ホームへの入所申請を認めるべきではないか。

 1 (ア)国民健康保険料等については、社会保障制度を維持していくために必要な改定を行っているところであり、引き続き、能力に応じた公平な負担が必要不可欠であると考えている。(イ)景気回復の実感については、国の月例経済報告が示す現状と区民の消費行動に乖離があることが要因の一つではないかと考えている。今後とも、国の経済政策については動向を注視していく。2 地域経済を支える区内中小企業の振興は、区政の最重要課題の一つであり、地場産業等、集積する多様な中小・小規模事業者の経営基盤強化をはじめ、時代のニーズに対応した商店街への支援等に取り組んできた。今後も、区民生活を支える近隣型商店街への支援の充実等、区内産業の持続的な成長・発展に向け、全力で取り組んでいく。3 (ア)区外を希望する方など、区外の施設への入所の経緯は様々だが、個々の状況に合わせて適切に対応している。国では、単身での生活が困難な生活保護受給者等の居住支援強化の仕組みを検討しており、引き続き、国の制度等を活用しながら、必要な取り組みを実施していく。(イ)区で入所調整を行い、区民を優先している。待機者の状況から、区外の方が入所を申請しても入所に至る可能性は低いため、入所の受け付けには至っていない。引き続き、待機者の状況等を踏まえ、適切に対応していく。