区長所信表明

項目

1   はじめに
2   今後の区政の考え方について
3   令和3年度予算案について
    ■ 区民の生命と健康を守り抜くための取り組み
    ■ 区民の生活や事業者をしっかり支えるための取り組み
    ■ 社会変革を捉えた行政運営の推進と財政基盤の強化に向けた取り組み
    ■ まちの活力を取り戻し、持続的な発展につなげるための取り組み
4   災害対策について
5   長期総合計画の改定について
6   おわりに


代表質問の概要

代表質問とは 各会派の代表者が区長提出議案や区長の政治姿勢に対し、質問を行うことです。


台東区議会自由民主党

太田雅久

新型コロナウイルス感染対策について

 1 本区では、病院・診療所・集団接種会場での高齢者のワクチン接種に向け準備を進めているが、遠くの会場への移動や外出が難しい方もいる。希望する高齢者全員に接種が行き届くよう、近くのかかりつけ医や訪問診療での接種等、様々な方策を検討すべきではないか。2 接種を円滑かつ着実に進めるには、多くの人員の確保が必要であるが、庁内や元区職員から人材を活用し万全な体制を整えるべきではないか。

 1 病院等での準備とともに、身近な診療所での接種や、外出が難しい方には訪問診療での接種ができるよう準備を進めている。高齢者施設の入居者で嘱託医がいない場合には、区で接種医の調整をしていく。引き続き関係機関と密に連絡・調整を行いながら着実に取り組んでいく。2 段階的に人員体制を拡充してきたが、新たに担当部長及び担当課長を設置し、更なる体制の強化を図っていく。円滑かつ着実に接種を実施できるよう、引き続き適切な体制整備に努めていく。

財政について

 1 区財政は、歳入では大幅な減収が想定される一方、歳出では行政需要が増大しており非常に厳しい状況であるが、3年度予算はどのような考えのもと編成したのか。2 減収からの回復には数年を要すると想定される中、施策を確実に進めていくには持続可能な財政基盤の堅持が不可欠であるが、中長期的視点に立ち、どのように財政運営を行っていくのか。

 1 感染拡大防止と社会経済活動の活性化に向けた取り組みを、時期を逸することなく講じていく必要があるため、区政運営の4つの柱に基づく事業に重点的に予算配分を行った。一方、減収対策が重要な課題となるため、全ての事務事業の見直しを徹底し、経費の縮減等を図っている。2 より一層の財源確保等に取り組むとともに、大規模改修等についても計画の見直しを行い、経費の平準化を図っていく。また、基金等も慎重かつ有効に活用していく必要がある。引き続き中長期的な視点に立ち、持続可能な財政運営を推進していく。

風水害対策について

 本区では、令和元年の台風19号の教訓を踏まえ風水害対応方針を策定し、本方針を反映させた地域防災計画の策定を進めているが、荒川氾濫時は本区だけでは対応できない大規模な災害が想定されるため、更に詳細を詰めなくてはならない。国や都との連携は当然だが、交通規制等での警察との連携や、消防・ライフライン事業者等との連携を更に深めていくべきではないか。

 各機関の円滑な活動には、より実効性を高めるための検討・協議が重要であるため、関係機関に対し、応急復旧に関する活動の詳細について聞き取りを実施している。今後も関係機関との情報共有等、一層の連携強化に取り組んでいく。

今後の学校教育の推進について

 学校園では、新型コロナウイルスを想定した新しい生活様式の実践により感染が拡大することはなかったが、日常の教育活動では行事や課外活動の中止・縮小等、様々な制約が生じている。感染症との戦いの長期化が見込まれる中、今後どのように学校教育を推進していくのか。

 感染症対策の成果を生かし、現在実施できていない教育活動等も工夫しながら可能な限り実施していく。更に、これまでの学校教育の実践とICTの活用を組み合わせていくことで、子供たちの健やかな学びの保障に向け、引き続き全力を挙げて取り組んでいく。


たいとうフロンティア

堀越秀生

令和3年度予算について

 3年度予算は、コロナ禍で大幅な減収が想定される中、全ての事業で見直しを徹底し、多くの事業で予算が減額となっている。1 持続可能な財産運営に向けて、どのような視点で事業の見直しを行ったのか。2 事業の見直しは単年度の取り組みなのか、それとも複数年度の計画として実施していくのか。3 今後、財政状況が悪化する要因として、法人住民税の一部国税化等、国の税制改正による歳入面への影響もあると考えられるが、国や都に財源確保に向けた働きかけを行うべきではないか。

 1 必要な施策を着実に推進するための財源確保と、持続可能な財政基盤の堅持の観点から、全ての事務事業の見直しを徹底した。取り組みに当たっては、個別の事業ごとに過去の実績や新型コロナウイルス感染症による影響等を踏まえ、事業手法の見直しや経費の縮減等を行った。また、施設の大規模改修等は、実施時期の見直しを図っている。2 3年度予算編成に向けた取り組みであり、複数年の計画として実施したものではないが、減収の長期化も想定されることなどから、更なる事業の見直し等が必要である。3 これまでも国や都に財政支援の要望等を行ってきた。今後、これまで以上に特別区の実態を踏まえた地方税財源の強化を国に要望していかなければならない。区民の生命と暮らしを守る取り組みを確実に実施していけるよう、引き続き、国や都に対し23区一丸となり、強く要望していく。

全世代型社会保障改革について

 1 不妊治療が保険適用される令和4年度までは、更なる不妊治療費の負担軽減が重要と考える。国や都の動向と本区における負担軽減の方針について所見を伺う。2 年収200万円以上の後期高齢者の医療費窓口負担割合については、現在の1割から2割に引き上げることが閣議決定された。この決定は、全ての世代が公平に支え合う観点からは評価できる一方、高齢の低所得者に対し急激な窓口負担増を強いることとなり、受診抑制につながる可能性もある。後期高齢者医療制度の安定的な運営を確保しつつ、高齢者への再度の負担増を避けるためにも、財政支援を大幅に拡充するよう国に強く働きかけるべきではないか。3 感染症対応を除いた医療のあり方として、今後、コロナ禍においても、外来におけるかかりつけ医と入院医療を担う病院との機能を分化し、また、連携の推進を図るなど、地域医療の提供体制の充実を図るべきではないか。

 1 国は、令和3年1月1日以降に終了した特定不妊治療を対象に、所得制限の撤廃や助成額の増額等、支援を拡充している。区は、国が拡充したこれらの対象者を含め、都の承認を受けた方に対し独自の上乗せ助成を実施している。今後も治療費の負担軽減が図られるよう国の検討状況を注視していく。2 これ以上高齢者や現役世代、地方自治体に過度な負担が生じないよう、国による財政措置の拡充が必要である。将来にわたる安定した制度の運営のため、全国後期高齢者医療広域連合協議会を通じて引き続き国へ要望していく。3 台東区医療連携推進会議において、かかりつけ医の普及や機能強化、病院間の連携等に取り組んでいる。更に、在宅療養連携推進協議会では、医療関係者に介護事業者等も加えて在宅療養に関する協議を進めている。今後も地域医療の提供体制の充実に努めていく。


台東区議会公明党

小坂義久

区政の今後の考え方について

 1(ア)新型コロナウイルスワクチン接種のシミュレーションが川崎市で行われ、予診に時間がかかり混雑が発生する可能性があるなどの課題が明らかになったが、本区において、集団接種のリハーサルを行う考えはあるのか。(イ)ワクチン接種への期待と不安が区民の間で交錯する中、ワクチンの有効性等の情報を分かりやすく発信すべきではないか。2 感染症対策として、中核病院である永寿総合病院の体制を強化し、地域医療の向上を図るべきではないか。3 感染者数の増加により、保健所職員は大変な状況にある。区長は、所信表明において保健所の人員体制の拡充を図ると述べたが、現在の保健所の状況と課題について伺う。

 1(ア)シミュレーションを踏まえ、会場レイアウト等の確認を行っている。また、予診票の事前配布等の検討も行っている。事前にリハーサルを行い、万全を期していく。(イ)接種券の発送に合わせて情報を個別にお知らせする。また、各種広報媒体を活用し、随時、正確に分かりやすく情報を発信していく。2 体制強化については中核病院運営支援協議会で協議し、地域医療の維持・向上につながる支援を実施していく。3 通常業務に感染症対応が加わり、業務量が膨大になっているため、兼務発令等により人員体制を充実してきた。今回、ワクチン接種担当部長及び担当課長を設置し、体制強化を図っていく。今後も、確実に感染症対策を推進できる体制を構築していく。

令和3年度予算案について

 区財政は、特別区税等の減収が見込まれる一方、行政需要が増大し、これまで以上に厳しい財政運営が強いられる。1 どのような思いで予算編成に取り組んだのか。2 持続可能な財政運営のために基金を有効活用するとともに、区民への分かりやすい情報発信を行うべきではないか。

 1 感染症対策等の新たな行政課題に加え、社会保障関連経費等の予算を確保した。予算の着実な執行により区民の生命と暮らしを守り抜き、ひととまちが輝く明るい未来を築き上げるために、全力で区政運営に取り組んでいく。2 将来の需要等に留意した基金の活用とともに、充当事業を示すなど情報発信の充実に努めていく。

観光戦略の見直しについて

 コロナ禍で観光産業は甚大な被害を受けている。また、今後は観光客の行動が変容し、個人・少人数かつ非接触・非対面の観光が進むと思われる。1 従来の戦略を見直し、収束後にいち早く来街者を呼び込めるよう準備すべきではないか。2 観光事業者への支援が必要ではないか。

 1 感染拡大防止対策に取り組む事業者の情報発信や集客イベント以外の手法による誘客の検討等を進めている。観光関連団体等の意見も伺いながら先を見据えた観光振興の方向性を検討していく。2 事業の転換等、新たなビジネスに取り組む事業者への支援等を展開している。今後も相談体制の充実等に積極的に取り組んでいく。

ポストコロナへ向けた区長の基本姿勢について

 ポストコロナ時代を迎えるにあたり、区民への力強いメッセージと、希望溢れるこれからの台東区像について伺う。

 コロナ禍の影響による社会の変革を的確に捉えながら、区民とともに前を向いてまちの活力を取り戻し、明るい未来を切り拓いていく。そのため、各分野の施策や取り組みを着実に推進するとともに、長期総合計画を改定し、「世界に輝く ひと まち たいとう」の実現を図っていく。


つなぐプロジェクト

本目さよ

ジェンダーギャップの解消と男性活躍推進について

 1 おむつ替えは女性が行うものという漠然とした考えのもと、男子トイレにおむつ替えシートが設置されないなど、性別による社会的な役割分担の認識等が、男女の違いにより生じる様々な格差を指すジェンダーギャップを生み出している。また、女性の方が非正規雇用の割合が高いため、コロナ禍により失業する女性が増加するなど、ジェンダーギャップが顕在化されている。そこで、ジェンダーギャップについての認識を伺う。また、顕在化されたジェンダーギャップを解消するため、男性の家庭での活躍推進も含めてどのように取り組んでいくのか。2 社会全体のジェンダーギャップの解消には、行政がジェンダーギャップの正しい認識を共有し、全ての事業で包括的に意識して取り組む必要がある。そこで、区職員がジェンダーギャップの知識と意識を持てるよう、研修の実施や意識改革を強く進めていくべきではないか。

 1 男女平等に関する台東区民意識調査で、家事や育児を行うのは女性の割合が高いという結果が出ており、日常生活におけるジェンダーギ ャップが存在していると認識している。区では、性別による固定的な役割分担意識の解消を目的に、料理の楽しさを学ぶことで家庭への男性参画を促す講座の実施等により意識啓発に努めてきた。今後は、より幅広い世代が興味・関心を持てるよう、動画配信等、あらゆる機会を捉えて、解消に向けた取り組みに努めていく。2 区では男性職員の育児休業取得率向上を目標に掲げ、ワークライフバランスの講演会の実施等により意識改革を図ってきた。今後は、人権研修でジェンダーギャップを重点課題にするとともに、ワークライフバランスを推進する研修の対象者を拡大していく。また、改定中の特定事業主行動計画で、男性の育児休業取得率を令和7年までに30%とする成果目標を設定することで、職員の意識改革を更に進めていく。

これからの就学前教育・保育の今後の方向性について

 本区では、待機児童解消に向け保育園整備を進めてきたが、定員に達しない園が地域によって出てきていることや、一定の保育水準に達していない園がある状況等から、今後の保育園整備における課題を検討する時期に来ている。一方、幼稚園については、預かり保育が実施されていないなどの理由により園児数が減少しており、ニーズはあるが現実的に選択するのが難しい存在となっている。就学前教育は、大人になってからの安定した生活に貢献すると言われているため、受けていない子どもについても様々な観点から注目し、関与していくべきである。就学前教育・保育について、幼稚園・こども園・保育園のそれぞれの良さを活かした質と量を担保できるよう、改めて検討すべきではないか。

 本区における就学前教育・保育は、幼稚園教育要領や保育所保育指針に則して質の確保を図っている。また、子ども・子育て支援事業計画において、教育・保育の需要等を基に量の見込みを算出し、待機児童解消に向け施設整備を進めている。しかし、幼児教育・保育の無償化等、様々な変化や課題に的確に対応していく必要があることから、就学前教育・保育の今後の方向性について検討を始めたところである。引き続き、幼稚園・保育園・こども園のそれぞれの役割や長所を活かし、様々なニーズに対応できるよう考えていく。


日本共産党台東区議団

秋間洋

コロナに立ち向かう自治体の長の責務について

 1 年末年始に感染が急拡大した際は、入院できず自宅や施設で待機を余儀なくされる区民が続出し死者も出たが、この責任をどのように感じているか。要因が区内の病床の少なさにあるという認識はあるか。また、自宅等での待機者をなくすため、どのような対策を講じていくのか。2 感染拡大を食い止めるには、区が自ら感染状況を分析し、国や都の方針を待たずに、独自の感染拡大防止策を展開すべきである。そこで、区内の感染状況や医療体制に対する認識と、今後の独自の施策展開について伺う。

 1 新型コロナウイルス感染症病床は、都内で5,000床が確保されているが、区でも回復期にある患者の転院受け入れなど後方支援病院の確保要請を検討していく。2 新規陽性者数は急拡大前の水準に戻りつつあるが、高齢者の割合が増加しており、警戒を続ける必要がある。区ではPCR検査センターを設置し、必要に応じて検査数を増やしてきた。また、高齢者施設等での速やかな検査の実施等、感染拡大防止に向け様々な施策を実施してきた。今後も必要な施策を積極的に推進し、感染防止に全力で取り組んでいく。

ケアとくらしを優先する区政について

 区長は今定例会の所信表明で、ウィズコロナ時代における区政運営の4つの柱を示し、各柱の比重を適切に調整しつつ施策を展開すると表明した。しかし、区の経済や福祉を支えている事業者や働き手は、これまで経験のない苦境に立たされており、多くの区民がウィズコロナ時代を迎える前に倒れてしまいそうな状況である。そこで、4つの柱を横並びで調整するのではなく、事業所や働き手を守り抜くことを区政運営の基本に据えるべきではないか。

 永寿総合病院の医療提供体制の強化に向けた支援や、区内中小企業者への特別融資の実施等、区民や事業者を守り支えるための取り組みを着実に推進してきた。事業所や働き手を守り抜くには、4つの柱を基に区政を推進していくことが必要と考える。感染症や社会経済活動の状況に応じて、4つの柱の比重を適切に調整しながら、迅速に施策を展開していく。

区民とともにコロナを克服する姿勢について

 感染症法の改正により、感染者が正当な理由なく検査や入院を拒むと罰則が科されることとなったが、罰則ではなく区民との協力で感染を抑え込むことを基本にすべきではないか。また、正当な理由の判断基準をどこに置くのか。

 宿泊療養を拒否される方などに感染拡大防止の必要性を丁寧に説明し、協力をお願いしてきた。今後も、対象者との信頼関係が構築できるよう、丁寧な対応に努めていく。また、正当な理由の判断は、国の通知等を参考に適切に対応していく。

基金の思い切った活用について

 区民は長期化するコロナ禍で、外出自粛による高齢者等の健康悪化など、かつてない苦しみの中にある。そこで、ケアに手厚い施策の拡充等のため、今こそ500億円に迫る基金を取り崩し、コロナ危機を乗り越えるべきではないか。

 基金は、中長期的な視点に立ち、適切に活用することが重要である。3年度予算編成に当たっては、財政調整基金は一定の残高を維持するとともに、公共施設建設基金等を積極的に活用した結果、取り崩し額は前年度を上回る約72億円となっている。引き続き持続可能な財政基盤を堅持することで、区民の生命と暮らしを守り、事業者を支えるための取り組みを着実に推進していく。