区長所信表明

項目

1 はじめに
2 観光と産業に関する今後の取り組みについて
3 脱炭素社会の実現について
4 令和4年度予算案について
 ■ 区民の生命と健康を守り抜くための取り組み
 ■ 区民の生活や事業者をしっかり支えるための取り組み
 ■ 社会変革を捉えた行政運営の推進と財政基盤の強化に向けた取り組み
 ■ まちの活力を取り戻し、持続的な発展につなげる取り組み
5 災害対策について
6 おわりに


代表質問の概要

代表質問とは 各会派の代表者が区長提出議案や区長の政治姿勢に対し、質問を行うことです。


台東区議会自由民主党

太田雅久

財政について

 令和4年度予算案は、特別区税等が増となり、一見するとコロナ禍の危機を脱したかのように感じるが、公共施設の老朽化への対応等、依然として多くの財政需要を抱えている。また、基金や起債の活用状況を見ると、一定の基金残高を確保し、将来の元利償還金の増加等にも配慮しているが、引き続き、持続可能な財政運営の推進により、社会経済情勢の変化にも迅速に対応できる強い財政を維持していかなければならない。1 区財政の現状をどのように認識しているのか。2 中長期的な視点に立ち、今後の財政運営をどのように行っていくのか。

 1 感染症の動向は不透明であり、未だ区民生活等への影響が懸念されることから歳入の下振れリスクがある。歳出面でも、コロナ禍で顕在化した課題等、新たな行政ニーズにも積極的に対応していく必要があり、決して楽観視できる状況にはないと考えている。2 持続可能な財政運営を推進するため、より効率的・効果的な手法による事業の見直し等を行っていかなければならない。区有施設の建設等にあたっては、ファシリティマネジメントの考え方に基づき進めていくとともに、施設保全計画の改定の中で、経費の平準化を図っていく。基金や起債は、引き続き慎重かつ有効に活用していく必要がある。今後も中長期的な視点に立ち、持続可能で安定的な財政運営を推進していく。

コロナ禍を踏まえた業務改善について

 オンラインでの事業実施やテレワーク環境の整備、パソコン上で行う定型的作業を自動化するRPAの導入等、感染拡大防止と行政機能維持を両立するために行った取り組みは、働き方改革や業務の効率化、区民サービスの向上につながっており、一過性のものとしてはならない。1 コロナ禍で得た経験を活かし、更なる業務改善を進めていくべきではないか。2 テレワークによる労務管理の煩雑化に対応できる管理システムの導入を検討すべきではないか。

 1 RPAやテレワーク環境の整備の継続は、更なる区民サービスの向上等につながる。4年度からは、電子申請の更なる推進に加え、全庁的な調査を実施し、類似業務の整理等に取り組むとともに、RPA導入業務を拡大して業務の効率化を加速させる。2 勤務状況等の把握が難しいという課題があり、解決を図りつつ引き続き適切な労務管理に努めていく。

公共施設の維持・保全について

 公共施設は、施設機能が移転して跡地になるなど、状況に変化が見られる。また、生活環境の変化等により、今後は機能統合や地域の偏在是正等が課題になると考えられている。更に、ICTを浸透させることで、人々の生活をより良いものへ変革する、デジタル・トランスフォーメーションの推進に伴う、行政サービスの提供方法の変化に応じた対応も求められている。そこで、ファシリティマネジメントに対する認識と今後の取り組みについて伺う。

 公共施設は、区民に公共サービスを提供する場の一つとしての役割を担っており、時代のニーズを視野に入れ、有効活用を進めていくことが重要である。令和4年度に策定する公共施設のファシリティマネジメントの基本方針に基づき、機能統合・適正配置を検討し、推進に努めていく。

コロナ禍における今後の対応について

 1 経済回復に向かうまでの間、厳しい環境の方々に手を差し伸べる区独自の施策を更に打ち出していくべきではないか。2 教育委員会の区立学校園における感染防止対策の更なる強化・徹底について、現場ではかなり混乱をきたすのではないかと危惧している。教育委員会が一丸となり、これまで以上に現場に足を運び、安全安心な教育環境を提供できるよう奮励努力し、大きく踏み込んだ活躍を望むが、所見を伺う。

 1 令和4年度は独り暮らしの高齢者等に対するコミュニケーションロボットの購入費助成や中小企業のデジタル化助成等、区独自の新たな取り組みを行う。観光と産業分野では、ポストコロナを見据えた方針を示し、地域活性化に向けた取り組みを進めていく。引き続き必要な施策を積極的に展開していく。2 学校園と協議を重ね、小中学校では、ICT等を活用した学習時間の設定等を校長の判断で行えることなどを通知した。また、感染症対策における最新情報の提供等、学校園に寄り添った様々な支援も行っている。校園長会等と連携しながら、一丸となって、引き続き様々な取り組みを進めていく。


たいとうフロンティア

堀越秀生

令和4年度予算について

 1 コロナ禍にも関わらず国の税収は好調が見込まれる中、自民党内部では、財政健全化を目指す財政健全化推進本部と積極財政を掲げる財政政策検討本部という二つの異なる財政観を持つ会合が立ち上がっているが、区の財政政策について、所見を伺う。2 感染症の動向が依然として不透明な中、引き続き区民生活や事業者を支える取り組みを時期を逸することなく実施するとともに、中長期的な視点からは、一定の財政の対応力を維持する必要もあると考える。今後の財政運営において、財政の機動力や対応力をどのように維持していくのか。3(ア)3年度の都区財政調整協議はどのような内容であったのか。また、この結果を受けて、どのように特別区交付金の当初予算額を見込んだのか。(イ)特別区の大きな課題である都区財政調整の都区間の配分割合については、4年度に協議することとなっているが、どのような姿勢で臨むのか。

 1 基礎的自治体の最大の使命は、区民の生命と健康、生活を守り抜くことだと考える。そのため、持続可能な財政運営に努め、社会経済状況の変化や多様化する行政ニーズに対し、迅速かつ確実に対応していく。 2 引き続き中長期的な視点に立ち、基金と起債の適切な活用により一定の基金残高や財政の柔軟性を確保していく。また、歳入確保の徹底や管理的経費の更なる節減等により、状況の変化にも迅速かつ確実に対応できる財政基盤の強化を図っていく。3(ア)法人住民税の大幅な増収に伴い、3・4年度の財源を踏まえた対応が課題となり、中小企業関連資金融資あっせん事業の後年度の利子補給分を3年度に前倒しで算定したことなどから、本区の普通交付金は、3年度はプラスとなったが、4年度にはマイナスの影響が生じた。そのため、普通交付金の当初予算額は、3年度の補正後予算額と比較して22億円減の266億円と見込んでいる。(イ)児童相談所の設置は都区の役割分担の大幅な変更に該当することから、その関連経費相当分について配分割合を変更すべきと考える。各区と緊密に連携を図り、特別区の財政需要が適切に算定されるよう、引き続き強い姿勢で臨んでいく。

ICT教育における個人情報保護と環境整備について

 1(ア)教育のデジタル化が進展する中、デジタル改革関連法の成立により、各自治体の個人情報保護のルールが統一化されることとなった。本区は、児童生徒の個人情報保護について、どのような対策を考えているのか。(イ)国は、マイナンバーカードと児童生徒の成績情報を紐付けることを検討しているが、本区ではその可能性はあるのか。2 国等は、GIGAスクール構想の促進に伴う情報量の増加に対応するため、より高速で大容量の通信が可能となる5G基地局の増設を検討している。他自治体では、民間事業者を活用して学校敷地内に5G基地局を積極的に建設する方針を打ち出した例があるが、学校敷地内への基地局の設置や増加する情報量への対策をどのように考えているのか。3 教育のデジタル化については、可能性や弊害など賛否両論が交わされているが、所見を伺う。

 1(ア)児童生徒の個人情報は、インターネットに接続できない環境で管理することで機密性を確保しているが、様々な脅威を想定しながら保護する必要があることから、今後も最新の技術動向を注視しながら適切な対策を実施していく。(イ)国は、児童生徒の転校時等における教育に関するデータの持ち運び等の方策や、学校でのマイナンバーカード活用の可能性等を研究していく予定である。本区は、国等の動向について情報収集し、児童生徒の教育に関するデータの取り扱いのあり方を研究していく。2 本区は、ICT教育での通信回線として固定回線を使用しているため、現時点で基地局を学校敷地内に設置することは考えていないが、今後、学習活動で扱う情報量が増加する可能性があるため、引き続き最新の技術動向等を注視しながら環境整備を行っていく。3 学習指導要領において、学習の基盤となる資質・能力に情報活用能力が位置付けられたことから、ICT機器を効果的に活用し、教育の質的向上を図ることが必要であると考える。子供たちが予測困難な時代をたくましく生き抜くために必要な資質・能力の育成に資するよう、策定中の学校教育情報化推進計画の実施を通して、教育情報化の確実な推進を図っていく。


台東区議会公明党

松尾伸子

超高齢社会における高齢者の住まいについて

 高齢化や核家族化等の進行により、今後、高齢者のみの世帯が増大することが見込まれている。そのような中、高齢者向けの住宅が少ないことや、賃貸住宅の貸主が高齢者の入居を望まないことなどから、高齢者の住宅確保は困難を極めており、高齢者が安心して住み慣れた地に住み続けるための喫緊の課題となっている。そのため、孤独死等を防ぐとともに、本区に住み続けられてよかったと思ってもらえるよう、幅広い視点から高齢者の住宅確保に資するための検討を行う必要があると考えるが、本区における将来に向けた高齢者の住宅施策について、所見を伺う。

 区は住宅確保を支援するため、居住支援協議会を設立し、入居相談窓口を開設した。窓口では、相談者の状況等を丁寧に聴き取り、区内の不動産関係団体を通じ、民間賃貸住宅の紹介等の支援を行っている。また、家主の都合による立ち退きを求められた際に、転居費用の確保が難しい場合は、費用の一部を助成することでセーフティネットの構築に努めてきた。更には、高齢者向けの公営住宅であるシルバーピアについては、令和5年度に1棟の整備を予定している。今後も、高齢者の居住の安定確保を推進していくとともに、高齢化率の推移や、住まいに対するニーズの変化を捉えていく。そして、改定予定の住宅マスタープランに反映させるなど、いつまでも安心して住み慣れた地に住み続けられるよう取り組んでいく。

地域共生社会について

 地域の相互扶助や家族同士の助け合いなど、かつては人々の生活の様々な場面で見守りや支え合いの機能があったが、社会全体が複雑化・多様化し、少子高齢化や核家族化の進行とともに、近隣とのつながりの希薄化などが進んでいる。そのため、制度・分野ごとの縦割りや、支え手・受け手という関係を超えて、多様な人々が一人ひとり主体となってつながり、支え合う地域共生社会の構築が重要である。その実現には、区民の意識の醸成や、幅広い周知等が必要と考えるが、今後どのように進めていくのか。 

 区では、基本構想や高齢者保健福祉計画等で、様々な主体が参画し、一人ひとりの暮らしと生きがい、そして、地域をともに創っていく社会の実現を掲げ、取り組みを推進している。近年、一人ひとりの課題は多様化しており、地域社会全体で支え合う仕組みづくりが重要である。様々な主体が連携・協働して福祉を推進するための取り組みを示す地域福祉計画を策定する中で、課題への対応を検討し、多様性が尊重され、住み慣れた地域で助け合い、支え合いながら、安心して暮らせるまちの実現を図っていく。

今ある大衆文化を守ることと、台東区らしい魅力ある街並みの創出について

 1 本区は、漫才や落語、演劇等の大衆文化の中心地であるが、古き良き魅力あるこれらの伝統の灯を絶やさぬよう、大衆文化の担い手として活動している方々がいる。しかし、コロナ禍の影響で困難な状況に置かれていることなどから、具体的な支援が必要と考えるが、これらの大衆文化をどのように守り、盛り上げていくのか。2 本区では、老朽化した建物が深刻な問題となっているが、文化的価値のある建造物や街並みを守っていくことも重要である。上野や浅草では、老朽化した建物の建て替えが進んでいくと考えるが、今後どのように本区らしい街並みを継承し、魅力ある景観を創出していくのか。

 1 江戸まちたいとう芸楽祭では、若手の芸人等に出演いただき、次世代の活躍の場を提供している。また、大衆芸能等の実演を収録した台東芸能文庫の貸し出し等、多くの方々がこれらに触れる機会の提供に取り組んでいる。今後もこれらの取り組みを進め、大衆芸能の継承・活用に努めていく。2 魅力ある街並みの創出には、歴史と伝統を尊重しながら市街地環境の向上を目指し、新旧が調和し引き立てあう景観形成を図ることが重要である。この認識のもと、景観計画で上野、浅草両地区を景観形成特別地区に位置付け、積極的に景観誘導を図ってきた。また、都市計画マスタープランでまちづくり推進重点地区に位置付けた上野地区では、まちづくりビジョンの実現に向け、景観に配慮した誘導方策を検討しており、浅草地区でも新たなビジョン策定に向けた検討を進めている。本区が魅力ある都市として更なる発展を遂げていくため、これからも地域特性に応じた景観形成に取り組んでいく。


つなぐプロジェクト

青鹿公男

将来の人口ビジョンについて

 コロナ禍でテレワーク等が浸透し、人々の地方への関心が高まる中、国が公表した2021年の住民基本台帳人口移動報告によると、都への転入超過の数は、現在の方法で統計を取り始めてから最も少なくなり、23区では初めて転出超過となった。本区においては、人口は毎年増加しているものの、その増加数は鈍化している。また、20歳代の転入数は毎年増加しているが、30歳代から40歳代の子育て世代では転入数は減少し、反対に転出数が増加している。子育て世代の転出の増加は、税収や子供の人口に影響を及ぼすだけではなく、町会の行事運営や災害時の自助共助活動における担い手不足にもつながるため見過ごすことはできない。現在、本区には子育て世帯の定住を促進する制度はないが、子育て世代の転出を防ぐためには、区政に対する意見や要望を持ちながらも、それらを伝えられずにいる子育て世代の要望等を的確に捉えて制度化していくことが重要であり、転入を促進する施策と転出を防ぐ施策の双方の推進が必要と考える。そこで、コロナ禍で社会が大きく変化する中、区政運営に与える影響が大きい人口政策に改めて目を向ける時期にきていると考えるが、今後、人口ビジョン・総合戦略を策定する際に、人口ビジョンをどのように描いていくのか。

 これまでも推計人口が示す水準の維持・確保を図るため、人口ビジョン・総合戦略に基づき、子育てやまちづくりなど、活力ある地域社会の維持・発展に資する施策を着実に実施してきた。令和3年度に実施した人口推計において、区の人口は、感染症の影響を受けつつも今後も増加が続くことが見込まれている。一方で、子育て世代の令和2年及び3年における転出数は、前年より増加している。人口動態を踏まえ、将来人口を展望することは、区政運営において大変重要であると認識している。本区が将来にわたり活力を維持し発展していくためには、人口の年齢層や世帯構成などのバランスが重要である。引き続き、子育てやまちづくりなどの施策を総合的かつ着実に推進することにより、バランスのとれた人口構成を確保していきたい。

35人学級を含めた小学校の教育環境の改善について

 国は、小学校の学級編制の標準を今後5年間かけて計画的に40人から35人に引き下げることとしている。35人学級の実現には新たに多くの教員が必要となるが、令和3年度の公立小学校教員採用試験の採用倍率が過去最低を更新するなど、教員の担い手不足が顕在化する中、どのように質の高い教員を確保していくかが今後の課題である。また、過酷な労働環境であるために休職や離職をする教員も多く、現在でも教員不足の影響で副校長が学級担任の代わりを務めている状況等があることから、労働環境を改善していかなくてはならない。更に、このようなソフト面の課題の他に、本区のような都市部の学校においては、教室不足等のハード面の課題もある。国は、学校における医療的ケアの実施に加え、障害等の有無に関わらず、誰もが支障なく学校生活を送ることができるよう環境を整備していく必要があるとしているが、本区の限られた面積の中で、どのように進めていくのか検討していかなくてはならない。また、例えば、蔵前小学校においては、通学区域内にマンションが次々に建設されたことで児童数が大幅に増加しており、教室の確保が課題となっているが、これに対しては旧小島小学校を蔵前小学校の分校として活用するなど、臨時的な対応も早急に検討していく必要があると考える。いずれにしても、23区で一番面積の狭い台東区において、35人学級を含めた小学校の教育環境の改善をどのように進めていくのか。

 令和7年度までに全学年が35人学級となる予定である。これに基づき、今後の人口推計等により必要教室数を算出し、現状の教室数では対応が難しい小学校については、区域外就学や指定校変更の制限、特別教室の転用等により教室を確保するなど適切に対応していく。また、国の法律や台東区バリアフリー基本構想の趣旨を踏まえて、誰もが支障なく学校生活を送ることができるよう、大規模改修等の機会を捉えて対応を進めていく。次世代を担う子供達の健全な育成ができるよう、全ての児童生徒にとって安全安心な学校施設整備に取り組んでいく。