区長所信表明

項目

1 はじめに
2 福祉サービスの充実について
3 脱炭素社会の実現について
4 令和6年度予算案について
 ■ あらゆる世代が生涯にわたって成長し輝くまちの実現
 ■ いつまでも健やかに自分らしく暮らせるまちの実現
 ■ 活力にあふれ多彩な魅力が輝くまちの実現
 ■ 誰もが誇りや憧れを抱く安全安心で快適なまちの実現
 ■ 多様な主体と連携した区政運営の推進
5 おわりに


代表質問の概要

代表質問とは 各会派の代表者が区長提出議案や区長の政治姿勢などに対し、質問を行うことです。


台東区議会自由民主党

石塚猛

財政について

 国の月例経済報告では、景気は緩やかに回復しているとの見方を示しており、急激な物価上昇も落ち着きつつあるが、依然として区民生活や地域経済は厳しい状況にある。このような中、国はデフレ脱却のための総合経済対策等に取り組んでいるが、これらが実施されていく過程では、新型コロナウイルス感染症が5類に変更になったこともあり、区民の社会参加や経済活動が更に活発化していくことが見込まれる。この機会を最大限に活かし、コロナ禍で計画通りに取り組めなかった課題や、社会状況の変化に伴う新たな課題等に確実に対応していかなければならない。1 令和6年度当初の予算額を見ると、新規事業や充実事業が多く計上されており、過去最大となっているが、どのような思いを込めて編成したのか。2 必要な施策の確実な実施には、強固な財政基盤の維持が不可欠であり、引き続き、中長期的な視点に立った持続可能な財政運営が重要であると考える。今後、どのように財政運営を行っていくのか。 

 1 誰もが希望と活力にあふれ、いきいきと活躍できるまちの実現に向け、喫緊の行政課題に確実に対応すべく予算編成に臨んだ。出産や育児に対する不安の軽減のため、出産費用の助成や産後ケアにおける自己負担額の軽減を行うとともに、福祉サービスの根幹となる人材確保等に係る支援の充実や、高齢者の社会参加を目的としたふれあい入浴券の給付枚数等の拡充を行う。また、本区が舞台となる大河ドラマの放送を契機とした地域活性化や、まちづくりにおけるDXの推進を図るとともに、区有施設の整備も着実に推進していく。更に、能登半島地震を受け、緊急防災対策として避難所の衛生対策等に係る経費も計上した。この結果、物価高騰等の影響もあり、歳出予算の規模としては過去最高額となったが、これまで培ってきた財政の対応力を活かし、基金や起債を積極的に活用することで、未来を見据え、「前進を実感できる予算」となるよう編成している。「ひと」も「まち」も輝き、区民が住んでよかった、暮らしてよかったと誇りと愛着を持ち続けられるまちの実現に向け、引き続き、必要な施策を迅速かつ適切に実施していく。2 歳出では、災害対策の強化をはじめ、区民福祉や地域活性化に資する取り組みの充実等、多くの行政需要を抱えているが、歳入では、国において税源の更なる偏在是正措置の検討を行うなど減収の懸念があり、先行きは不透明な状況である。このような状況においても、必要な区民サービスを維持しつつ、社会経済状況の変化にも確実に対応していくには、財政の対応力を維持していく必要があるため、更なる財源確保や管理的経費の節減、デジタル技術の活用等による業務の効率化、事業の見直しに継続的に取り組み、行財政基盤の強化に努める。また、基金や起債について、将来の財政需要や基金残高、長期的な償還の負担に留意しつつ慎重かつ有効に活用し、一定の基金残高や財政の柔軟性を確保していく。今後も中長期的な視点に立ち、持続可能な財政運営を推進していく。

まちづくりの未来と区有地活用について

 1 本区は、約100年前の関東大震災の復興事業により、街路や橋梁等の都市基盤が整備され、これが現在の市街地の骨格となり、日本を代表する街として発展してきた。平成30年に20年後の本区の都市の将来像を実現するため、都市計画マスタープランを改定し、都市の骨格のあり方や、上野や浅草など7つの重点地区を定めるなど、積極的にまちづくりに取り組んでいるが、デジタル化の進展による生活スタイルの劇的な変化等、将来的に都市環境が大きく変化することが予想される。まちづくりは長期にわたり取り組む必要があるため、社会経済情勢の変化に応じ、方向性を見定めながら取り組むことが重要である。そこで、今後も観光や商業等の都市の活力を発揮し、世界に輝く台東区として永続的に発展し続けるため、100年先を見据えたまちづくりにどのように取り組むのか。2 旧東京北部小包集中局跡地は、長年にわたり活用の検討が行われているが、未だ具体的な活用の方向性が示されていない。本跡地は、都市計画マスタープランに北部地区のまちづくりの拠点として位置づけられており、本跡地の活用を実現し、北部地区のまちづくりに係る課題にも積極的に取り組む必要がある。そこで、本跡地活用の実現と北部地区のまちづくりの今後の展開について伺う。

 1 今後のまちづくりは、地域をはじめとした多様な方々が主体となって参加し、公民連携で進めていく必要があるため、まちづくりへの参画の仕組みや支援等を盛り込んだ総合的な条例を来年度に制定し、必要な制度や事業についても構築する。また、市街地の課題としては、建物の耐震化や不燃化等、防災性向上を図る必要があり、引き続き取り組みを進めていく。更に、都市計画マスタープランで位置付けたまちづくり推進重点地区は、拠点性の向上等、都市基盤の再生が求められており、各地区のまちづくり構想に基づき、整備に向けた検討を進める。区の将来像である「世界に輝く ひと まち たいとう」の実現に向けて取り組み、100年後も安全で活力ある魅力的なまちが持続できるよう努めていく。2 北部地区のまちづくりについては、その将来像を「人々が共生し住み働き続けられる便利なまち」とし、実現に向けて施策を推進しているところである。その中で、旧東京北部小包集中局跡地の活用は、北部地域の活性化に欠かせない重要な課題であると認識している。活用の実現に向け、本年1月に民間提案の公募を開始した。提案の内容は、北部地域をはじめ様々な方の意見をいただきながら審査を行い、令和6年度末に北部地域はもとより、区全体の活性化とまちづくりに資する案を選定する。本活用を起爆剤に地域特性を活かしたまちづくりを更に推進し、都市機能や防災性を向上させ、より魅力あるまちとなるよう全力で取り組んでいく。


台東区議会公明党

寺田晃

子どもの幸せを最優先する社会の実現について

 1 子どもや子育てに関する問題が複雑化し、社会全体で支える体制づくりが求められる中、国は、昨年12月に子どもや若者を権利の主体として明記したこども大綱を策定し、こども基本法においては、こども大綱を勘案して、自治体独自のこども計画を策定する努力義務が定められた。そこで、本区の計画策定や推進にあたっては、子どもや若者、子育て中の当時者から幅広く意見を聴取して、計画や施策に反映し、当事者と対話しながら共に施策を進めていくことが、当たり前に行われるようにすべきではないか。2 子どもの権利の認知度はまだ十分ではなく、理解を促進する啓発が重要である。今こそ(仮称)台東区子供権利条例を制定し、子どもの権利の認識を深め、理解を促進することで、全ての子どもが個人として尊重され、その最善の利益が考慮される、こどもまんなか社会を推進すべきではないか。

 1 これまでも、次世代育成支援計画の策定に際しては、当事者へのニーズ調査等により意見等を計画に反映してきた。また、計画事業を推進する際も、必要に応じてアンケート等により当事者から意見を聴取し、事業に反映させている。こども計画については、国の検討を注視しているところだが、策定の際には、同様に当事者の意見を聴き、それを反映させていく必要がある。今後とも、子供施策を推進するあらゆる場面で、意見聴取の機会の充実を図り、施策に反映していけるよう努めていく。2 区では、母子健康手帳等に児童の権利に関する条約を掲載するほか、区民を対象とした研修会等で子供の権利の啓発を図ってきた。条例制定についても子供の権利の認識を深める手段の一つと考えるが、実効性のあるものとするための仕組みづくり等、制定に向けて取り組むべき課題があるため、先行自治体の取り組みを参考にしながら検討していく。引き続き、教育委員会とも連携し、子供の権利の啓発に努めることで、こどもまんなか社会の実現に取り組んでいく。

自然災害から区民の命と暮らしを守り抜く防災・減災対策について

 1 能登半島地震を受け、今一度、災害への備えや首都直下地震の対応を行い、更なる防災・減災対策を進めるべきであると実感した。区では地域防災計画の修正を進めているが、修正の考え方やポイントのほか、能登半島地震を踏まえて更に充実すべき防災・減災対策について、所見を伺う。2 能登半島地震による被害の大きい石川県珠洲市の中で、毎年行っていた津波避難訓練どおりに行動することで、全員無事に避難することができた地区があった。本区でも、能登半島地震や首都直下地震の被害想定を踏まえ、避難所運営マニュアルや安全・安心ハンドブックを更新して啓発を図るとともに、実践的な訓練を含め、更に対策を推進すべきである。そこで、全ての区民が自助を我が事として捉え、防災・減災行動が実践できるよう、更に周知啓発を図るとともに、避難所運営や地域での防災訓練等の共助の取り組みも推進すべきではないか。

 1 今回の計画の修正では、首都直下地震等による被害想定に基づき、自助、共助の底上げによる地域防災力の向上や、国・都と連携した帰宅困難者対策の強化等を計画に位置付ける。また、能登半島地震を受け、来年度予算案に緊急防災対策として備蓄品の大幅な拡充に要する経費を計上し、その内容を計画に反映する。更に、災害対策の見直しを行い、対応がまとまり次第、必要な対策を講じていく。2 日常備蓄や在宅避難の備えを周知し、避難所運営キットの配備や地域と連携した総合防災訓練等により自助、共助の取り組みを推進してきた。今後、災害対策への関心や防災訓練への参加等を一層促進するため、身近な町会や避難所での訓練をより充実させるとともに、誰でも気軽に参加できる防災イベントの開催等、学びや訓練に触れる機会を増やしていく。引き続き、災害への備え等の情報をホームページ等で発信し、また、避難所運営委員会の活動や町会等の防災訓練への支援等、安全、安心なまちづくりに取り組んでいく。

脱炭素社会の実現について

 深刻化する気候変動問題等、環境を取り巻く状況の変化に対応するため、区は令和4年2月に、2050年のゼロカーボンシティ実現を目指す取り組みの推進を宣言し、環境基本条例の制定や環境基本計画の改定を進めている。しかし、昨年11月に行われた環境シンポジウムは、全区民に見てもらいたい内容であったが、客席はまばらで非常に残念であった。条例制定や計画改定等を行っても、全区民が理解した上で施策を実施し、区民が行動していかなければ脱炭素社会は実現できない。このため、目標達成に向けた具体的な行動の実施に向け、(仮称)台東区脱炭素行動計画を策定し、同計画のガイドブック等を区民一人ひとりに手渡しして理解を深めてもらい、全区民で脱炭素に向けた行動をとるべきと考える。環境基本条例の制定や環境基本計画の改定をどのように全区民に理解してもらい、また、どのような施策の実施により区民の行動を促し、脱炭素社会を実現していくのか。

 これまでも、環境に関する幅広い情報発信や学習機会の提供、人材の育成をはじめ、区民や様々な団体との協働に取り組むなど、環境基本計画の目標の一つである「一人ひとりが環境を意識し、行動するまち」の実現に努めている。今定例会に提案した環境基本条例において、区、区民、事業者、滞在者の責務を明確にするとともに、条例の主旨や改定した計画の内容を理解してもらうパネル展の開催や、10月から開始するプラスチック分別回収等、様々な事業の中で周知啓発を図っていく。また、子供達に向けては、日常生活など身近な場面で脱炭素について自ら考え行動できるよう、環境学習の充実を図る。更に、計画の重点事業に位置付けた、共同住宅向けLED照明や事業所向け省エネ設備導入に係る助成率、助成額の引き上げ等の取り組みを実施し、区、区民、事業所が一丸となって脱炭素社会を実現するよう邁進していく。


つなぐプロジェクト 無所属・都民ファースト・国民民主

早川太郎

行財政運営について

 令和6年度一般会計予算案は過去最高額となっている。歳出は、新たなニーズへの対応や国等の制度変更に伴う事業の増加、物価高騰等により、今後も増加傾向が続いていくことが見込まれる。また、歳入は、法人住民税の国税化等、国による税源の偏在是正措置により区の税源が奪われている中、更なる措置が検討されており、依然として不透明な状況にある。このため、区財政は決して楽観視できる状況ではない。1 区財政の現状について、所見を伺う。2 国等の制度変更を含む社会状況や個人の価値観も大きく急速に変化している。安定的に行政運営を進めていくためには、事業の見直しとともに、長期総合計画を推進する上で計画期間の中で強弱をつけて事業を実施するなど、これまで以上に社会の変化や区民ニーズに即した施策を展開すべきではないか。 

 1 歳入では更なる偏在是正措置が国で検討されており、特別区交付金の減収の懸念等、その影響に十分注意する必要がある。歳出では、災害対策の強化等、様々な行政需要の増大とともに、物価高騰等の影響も継続する見込みであるため、区財政は決して楽観視できる状況ではないと認識している。引き続きより一層の財源確保や事務事業の効率化を進めるとともに、基金や起債の活用では、一定の基金残高の確保や起債に伴う長期的な償還の負担にも留意していく。今後も必要な区民サービスを確実に実施できるよう、中長期的な視点に立ち、持続可能で安定的な財政運営を推進していく。2 新型コロナウイルス感染症を契機に区民の行動等が変化しており、また、物価高騰の影響等、区を取り巻く環境は変化し続けている。持続可能な行財政運営の推進には、社会の変化や多様化する区民ニーズを的確に捉えることが重要であると認識している。区では、国等の動向を適宜把握するほか、事務事業評価等を活用し事業の見直しを図るなど、社会経済状況の変化による影響を把握・分析した上で様々な事業を効果的・効率的に実施している。今後も行政計画等に基づく事業を着実に推し進めるとともに、少子化対策等の課題や変化により生じる新たな行政需要にも対応しながら必要な施策を柔軟かつ臨機応変に展開していく。

教育・保育について

 現在の教育・保育を取り巻く環境は大きく変化しており、課題も山積している。教育分野では、教育現場の働き方改革として現場へのサポート機能の充実に取り組んでいるが、必要な人員の確保が困難な状況にあり、また、ICT教育への対応等、多くの課題がある。保育分野では、こどもクラブの待機児童対策が課題であり、また、定員に満たない保育園が生じていることに加え、幼稚園の入園希望者も減少する中、保育園も幼稚園も公立園として役割について検討すべき時期に来ている。そのため、安心して子育てができる環境整備と子供たちの未来の可能性を拡げる教育環境整備にしっかり取り組んでいくべきと考えるが、現状の教育・保育における課題認識と対応について、所見を伺う。

 就学前教育・保育では、定員に満たない保育所が生じているほか、幼稚園の園児数も減少傾向にあるため、集団教育等の効果が十分に得られるよう、教育・保育の質の維持・向上が課題となっている。そこで区立幼稚園では検討委員会を立ち上げ、求められる役割等の検討を開始しており、今後も質の向上に、より一層努めていく。学校教育では、すべての児童・生徒に質の高い教育を保障する上で、学習指導要領の内容を着実に実施することが重要であり、持続可能な社会の創り手となるために必要な資質等の育成が求められている。そこで、ICTを学校教育の基盤的なツールとして活用し、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実により主体的・対話的で深い学びにつなげていく。また、依然としていじめ問題の深刻化等が大きな課題であるが、学校では教員が子供たちと向き合う役割を担っていることから、教員自身がゆとりややりがいを持って働く環境を早急につくることが、いじめ対策等を含めた効果的な教育活動を提供するために重要である。そこで、働き方改革の一環として、既に教育課程編成の見直しを指示するとともに、来年度は小中学校をサポートする人材の配置を拡充していく。放課後対策では、引き続き緊急3か年プランに基づく対策を進めるとともに、来年度から試行実施する放課後子供教室の時間延長の状況を踏まえ、対象施設の拡大を検討し充実に努めていく。次世代を担う子供たちが健やかに成長できるよう、教育・保育の充実に向け、学校園とともに教育施策をより一層推進していく。

障害福祉について

 近年、障害者の重度化や高齢化等、障害福祉サービスのニーズは増加、多様化している。区ではニーズに応えるべく、障害者対応が可能な特別養護老人ホームの整備等を進めているが、国の制度により事業者が得られる報酬では、事業者が必要なサービスをしっかりと実施していくことが困難な場合等もあり、利用者のニーズに応えきれていない事業もある。これまでも区は、現場に最も近い自治体として、人材の確保等、事業者がサービスを適切に提供するためのサポートを実施しているが、今後も国等の制度では不十分な部分をしっかりとサポートし、利用者が安心してサービスを受けられる環境整備に努めていくべきと考える。そこで、今後の障害福祉について、所見を伺う。 

 障害者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、障害の状況や生活環境等、一人ひとりに寄り添った支援を行っていくことが求められている。そのため、多様なサービスを提供するための体制整備をより一層進める必要があり、人材の確保等、喫緊かつ重要な課題の解決に向けて、取り組みの充実に努めている。引き続き、国等の動向を十分に注視するとともに、本区の障害者や家族等のニーズを適切に把握し、障害福祉サービスの基盤整備をより一層推進していく。