令和二年
新春対談


昨年を振り返って

堀口 あけましておめでとうございます。
区長 松倉 あけましておめでとうございます。
堀口 令和に時代が変わって初の新春対談を始めさせていただきます。本年の対談は、浅草にあります「浅草演芸ホール・東洋館」を率いる東洋興業㈱会長の松倉久幸様です。よろしくお願いいたします。まずは、服部区長と松倉会長のお二人に、昨年一年を振り返っていただきたいと思います。服部区長、昨年はどのような一年でしたか?
区長 昨年は、「令和」という新しい時代を迎え、本区でも、3月には、区政運営の長期的指針である「長期総合計画」を策定し、区の将来像「世界に輝くひと まち たいとう」の実現に向け新たな一歩を踏み出しました。5月には、上野動物園のパンダ「シャンシャン」の中国返還時期が、本年12月まで延長するという嬉しいニュースもありました。7月には、安全安心の確保に向け、都内の自治体として初めて、宿泊施設事業者団体と「安全安心に関するパートナーシップ協定」を締結しました。11月には、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援の強化を図るため、花川戸に浅草保健相談センターを新設しました。そして何よりも、8月には、松倉会長に実行委員会の顧問を務めていただいている「江戸まち たいとう芸楽祭」を一昨年に引き続き盛大に開催できました。上野公園でのオープニングイベントでは、映画「ボヘミアン・ラプソディ」の野外上映やトークショーなどに、総勢約7千800人の方々にお集まりいただくなど、大変な盛り上がりを見せました。これも、松倉会長のご尽力の賜物と、本当に感謝をしております。
堀口 松倉会長にとってはどのような一年でしたか?
松倉 服部区長が一生懸命「江戸まち たいとう芸楽祭」に力を注いでいただき、それに区民や出演者が応えたということで、素晴らしい一年でした。ぜひ、これからもこのような催しを続けていただきたいです。
 

「江戸まち たいとう芸楽祭」について

堀口 今お話がありました「江戸まち たいとう芸楽祭」は、台東区において古くから継承されてきた多彩な芸能・芸術文化を楽しんでいただく事業ですよね。松倉会長は顧問に就任されたとき、どのようなお気持ちでしたか?
松倉 東洋館で修業を積んだビートたけしが名誉顧問を務めるということで、服部区長の期待に応えたいと思い、引き受けました。
区長 ありがとうございます。昨年10月に開催した、ビートたけしさんのトークショーをはじめ、子供向けの映画のワークショップや浅草オペラなどのプログラムに多くの方にご参加いただくなど、大盛況のうちに「夏の陣」は終了しました。今月から始まる「冬の陣」では、昨年に引き続き、ビートたけしさんが認めた若手芸人のグランプリを決める「ビートたけし杯 お笑い日本一」を、1月27日(月)に東洋館で開催するほか、多彩なイベントを区内各地で行う予定です。是非皆様に足を運んでいただきたいと思います。
堀口 会長、ビートたけしさんについて、なにか思い出に残っていることはありますか?
松倉 ビートたけしは浅草で修業を積んだ男ですので、浅草に帰ってきて、台東区で仕事ができることを大変喜んでいました。彼は、浅草で芸を磨いて世に出ていこうという気持ちを持っていましたので、浅草には特に思い入れが深いんじゃないかと思います。浅草でなかったら、あれだけ芸の幅が広がっていかなかったのではないかと思っています。
区長 本日司会をしていただいている堀口さんは、「江戸に詳しすぎるアイドル」として活躍されていますね。テレビ活動のほか、日本舞踊や殺陣など多様な芸能・文化に携わっている堀口さんから見て、この芸楽祭はどのように映りますか?
堀口 私は、浅草は「芸能の聖地」だと思っています。また、歴史的にもさまざまな文化・芸能が集まっている場所ですので、地元のお客さんの目が大変肥えており、舞台に上がると盛り上げてくださる素晴らしい場所だという印象があります。それも、芸能を私たち庶民にも楽しめる文化として盛り上げていく気風が台東区にあるからだと感じており、この芸楽祭も、台東区でしかできない試みだと注目させていただいております。
区長 ありがとうございます。

 

「笑い」について

堀口 次は、お正月ですし、「笑い」についてお聞きしたいと思います。これまで、たくさんの「笑い」を見てこられた松倉会長にとって、「笑い」とはどのようなものでしょうか。
松倉 「笑い」は健康への影響が一番大きい、人間にとって本当に必要なことなんです。ですから、私は1日1回大きな声で笑うようにしています。「笑い」を求めることで、皆さんも健康になっていただけたら、こんなに嬉しいことはないです。
堀口 区長はいかがでしょうか?
区長 社会全体で高齢者人口の増加が予想されるなか、台東区は健康長寿社会を目指していますが、「笑いは人に活力を与える。」と会長が言われるように、健康に良い影響を与えます。区でも、お笑い芸人さんによる演芸で笑い、専門スタッフによる軽い運動を行うことで身体の元気力を高める「笑って元気教室」を実施しています。また、「区民が笑顔で安心して暮らせるまち」になっていくことは大切だと思っています。日頃から地域でコミュニケーションを取り合い、まちに「笑い」があふれれば、まちの雰囲気も良くなり、皆が笑顔で、明るく元気になると思います。「笑い」にはそんな力もあるのではないでしょうか。
堀口 近頃、地域でのコミュニケーションが不足していると言われていますが、「笑い」「笑顔」があることは、大切ですよね。
松倉 大切です。今でもその「笑い」を求めて、浅草へ笑いに皆さんやってきます。東洋館にくるお客さんも「おい、笑いに来たよ!」なんて言うわけですから、私も「どうぞ!大いに笑っていってください!」といつも言っているんです。
堀口 松倉会長は、これまで生の舞台を見てこられました。浅草における舞台の良さはどのようなものがありますか?
松倉 芸人は、お客さんが育てるんです。「おもしろくない!引っ込め!」なんて言葉が平気で飛んできますが、浅草以外でこんなことはありません。芸人も「引っ込めとは何事だ。こっちも一生懸命やっているんだから、お客さんも一生懸命聞いてくれ。」と返すわけです。こういう「反応」が浅草の良さであり、魅力だと思います。
堀口 その生の笑いを一目見ようと、浅草は、毎年元旦から大変賑わっていますよね。会長は、毎年お正月をどのように過ごされているのですか?
松倉 正月は寝る間も惜しんで現場に出ます。一日くたくたになるけど、お客さんの笑いによってその疲れが吹っ飛んじゃいます。浅草に来てくれるお客さんは、よく笑ってくれるし、それが本当にありがたいことなんです。笑いで正月が明けるという、これがなんとも言えませんな。


浅草の魅力、区の魅力について

堀口 区長は、浅草の魅力について、どのようにお考えでしょうか。
区長 浅草流鏑馬や、三社祭、隅田川花火大会、桜橋花まつりなど、一年を通して浅草ではさまざまなイベントが開催されています。おかげさまで、国内外の多くの方に訪れていただき、いつでもまちに活気があふれていることは、浅草の魅力だと思います。また、常に浅草の繁栄とともにあった隅田川も、大きな魅力だと思っています。
 昨年、「隅田川の水辺空間史」をテーマに、講演会を開催しました。その中で、隅田川の地理的な面での特徴や、多様な機能・役割を持っていることなどについてお話をいただき、改めて隅田川の素晴らしさを実感しました。
堀口 続いて松倉会長にお伺いします。「浅草六区」はこれまで多くのコメディアンを輩出していますが、六区を含めた浅草はどのようなまちでしょうか?
松倉 浅草六区は伝統的に「笑い」のまちです。かつて、六区に芝居小屋が移ってきて、一時は劇場が33軒並ぶほどだったんです。その中で、大勢の素晴らしい芸人が生まれ、それを今の芸人が受け継ぎ、今の六区の笑いに繋げていると思っています。
堀口 現在、区ではこちらの地域において何か事業を進めていますか?
区長 平成28年には、浅草六区の復活を目指すプロジェクトとして、「浅草六区ブロードウェイ」の道路空間を活用した社会実験が、地元の商店街振興組合によって行われ、区も協力しました。昨年9月には、まちの皆様の多大な努力の結果、「国家戦略特区」の認定事業として了承され、通りでのオープンカフェの設置や、各種イベントの実施が可能となりました。この認定をきっかけに、浅草六区が更に盛り上がっていくことを期待しています。
松倉 ありがたいことです。区長さんにもお力添えをいただいて、浅草がさらに繁栄していくことができればと思っています。
区長 堀口さんはどうですか?
堀口 浅草は今も、歴史や文化など、色々なものが詰まったまちで、どこを取っても魅力的です。江戸時代にも「浅草に行けばなにかおもしろいことがある」と思われていて、その伝統が現代にも引き継がれているのは、すごいことです。まちの中に歴史と文化が息づいているということは、浅草に限らず台東区全体の大きな魅力の一つになっていると思います。
区長 そうですね。先人たちによって築き上げられた、多彩で粋な文化は、区民の誇りであり、このまちを成長・発展させてきた力の源であると思っています。これからも、文化の力を最大限に活かして、まちの魅力と活力を向上させていきたいと考えていますので、松倉会長には今後ともお力添えをいただければと思っています。
松倉 こちらこそ、よろしくお願いします。


江戸ルネサンス事業について

堀口 続きまして、「江戸ルネサンス事業」についてお伺いします。
区長 江戸ルネサンス事業とは、江戸文化を色濃く残す本区の魅力を、講演会やイベントを通じて区内外に発信する事業のことで、平成30年度より実施しています。事業の一環として、講演会シリーズ「江戸から学ぶ」を開催し、昨年11月には、シリーズ番外編として、「江戸の音を観る 谷中編」を開催しました。今月は、「江戸から学ぶ」の第12回講演会として、「幕末の新名所・浅草花やしき」を開催します。この講演では、浅草寺界隈の町おこしという重要な課題を背負い、江戸の名所となった花やしきの歴史をたどります。
 また、来月にはシリーズ番外編の第2回として「江戸の音を観る 奥浅草編」も開催します。それぞれ浅草をテーマにした講演会ですので、会長も是非、聞きにいらしてください。
松倉 いい事業ですね。ぜひお伺いします。
区長 堀口さんは、江戸ルネサンス事業について、どう思われますか?
堀口 江戸時代の文化がたくさん残っている台東区にしかできない素晴らしい取り組みだと感じています。より良い未来に変えていくヒントとなる江戸の知恵に光をあてるこの事業は本当に素晴らしいと思います。
区長 ありがとうございます。江戸ルネサンス事業の一環として、これまで江戸時代に創業した区内の46の事業所を顕彰し、区が世界に誇る「宝物」として広く発信する事業を実施しています。堀口さんには、昨年度、区のケーブルテレビの番組にご出演いただき、4つの江戸創業事業所を巡ってもらいましたね。
堀口 はい、4つの事業所の歴史や商品が素晴らしく感動しましたが、一番印象に残っているのは、どのお店もそこで働いている人が素晴らしかったことです。台東区の事業所には、「また来たいな」と思わせてくれる魅力があると感じました。
区長 昨年11月には、「創業事業所ガイドツアー」を実施し、多くの小学生が、ものづくり体験や店舗見学、店舗周辺のまち歩きを楽しんでいました。このように区では、「江戸を知る」・「江戸を楽しむ」・「江戸を活かす」をテーマに、3年間かけて、江戸ルネサンス事業を進めています。今後も、江戸文化の薫る本区の魅力を積極的に発信していきたいと思っています。
堀口 楽しみに拝見させていただきます。


オリンピック・パラリンピックの開催に向けて

堀口 今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催される年です。開催が今から待ち遠しいですね。
区長 オリンピック・パラリンピックの開催まで、いよいよ半年となりました。区では、庁舎等へのカウントダウンパネルの設置や、大会エンブレムの掲示など、開催に向け気運醸成を図ってきました。また、オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、来街者の更なる増加が予想されます。台東区は、地域や学校と一体となって、「花の心プロジェクト」を推進しています。台東区の花「朝顔」をはじめ、四季折々の花でまちを彩り、「花の心」で心豊かなうるおいのあるまちを目指しています。プロジェクトの一環として、昨年、東京都と連携して、雷門通りと、雷門一之宮通りに、ハンギングバスケットを設置しています。
 また、昨年8月には、浅草雷門前の並木通りに、区の花である朝顔のオブジェ「おもてなしの庭」を整備しました。この「おもてなしの庭」は、園芸文化や竹細工などの日本らしさを演出しており、世界中から本区に訪れる方々をおもてなしいたします。
堀口 「おもてなしの庭」は、朝顔や、在来種の植物が植えられたオブジェで、すごく清々しいイメージの素敵な空間だと思いました。
区長 オリンピック・パラリンピックが開催される夏の時期には、たくさんの朝顔が咲いていると思います。
松倉 私も今から開催が楽しみです。前回の東京オリンピックも賑やかでしたから、今回もまた前回以上に賑やかになればと願っております。
区長 オリンピック・パラリンピックは、文化の祭典でもあり、本区の多彩な文化・芸術の魅力を広く知っていただく絶好の機会でもあります。この機会に、多くの方々に本区の文化・芸術を感じてもらいたいと思っています。
堀口 東京でのオリンピック・パラリンピック開催は、子供たちにとっても生涯忘れられないような感動を残すことになるのではないでしょうか。
区長 そうですね。子供たちにとって貴重な経験となるよう、区内の小中学校では、各種目の事前学習はもちろん、出場国や各種目のルールを調べる学習も行っているほか、車いすバスケットボールなどのパラリンピック競技の体験会も実施しています。昨年11月には、本区でシッティングバレーボールの国際大会が開催され、小中学生をはじめ多くの方が観戦するなど、障害者スポーツへの理解も深まっています。
堀口 貴重な経験を積み、子供たちがまた一つ成長してくれるのではないでしょうか。
区長 オリンピック・パラリンピック開催まであとわずかです。私は、区を訪れる方々を心からおもてなしするとともに、区民・来街者の皆様の安全安心の確保に向けて、全力で区政に取り組み、この一大イベントを、皆さんと笑顔で明るく、元気に楽しみたいと思います。
堀口 区長から「笑顔で明るく、元気に」というお言葉がでました。笑顔が印象的な会長も笑ってオリンピック・パラリンピックを迎えたいですよね。
松倉 笑顔で迎えたいですね。
区長 堀口さんの今年の抱負についても、是非お聞かせください。
堀口 東京オリンピック・パラリンピックで世界の方がお見えになりますので、東京を故郷に持つ私としても、江戸をキーワードに東京の魅力というのを発信していきたいと思っています。
区長 松倉会長、本日はありがとうございました。堀口さんも、楽しい進行をありがとうございました。
堀口 ありがとうございました。
松倉 ありがとうございました。みなさん笑顔で元気に頑張りましょう。