令和2年第1回区議会定例会区長所信表明《要旨》

はじめに
 国は、誰もが個性と多様性を尊重され、生きがいを感じられる「一億総活躍社会」の実現に向け改革を進めており、全ての世代が安心できる「全世代型社会保障制度」を目指し、政策を実行しています。
 本区には、支え合いや助け合いという古くから培ってきた地域の力がある一方、共働き世帯の増加や核家族化の進行などにより、地域コミュニティの衰退が懸念されています。台東区が、将来にわたり活力ある都市として更なる発展を遂げていくためには、本区に息づく地域の力を最大限に活かし、誰もが安心していきいきと活躍できる環境を整備することが重要です。私は、「ひと」も「まち」も輝き、区民の皆様が誇りと愛着を持ち続けられるまちの実現に向け、本年も全力で区政運営に邁進してまいります。

東京2020大会について
 受入環境の整備やオリンピック・パラリンピック教育など、これまでの取り組みに加え、東京2020大会の開催に合わせて、生涯学習センターにおいてコミュニティライブサイトを開催するほか、台東区循環バス「めぐりん」を大会仕様に装飾するなど、この世界的祭典を盛り上げる取り組みを実施します。
 昭和39年の東京大会の開催を記念して、朝倉文夫氏の傑作である「生誕」像をシンボルとする生誕噴水塔が、上野恩賜公園入口前に設置されました。この「生誕」像を、東京2020大会の開催に合わせて下町風俗資料館脇に20年ぶりに設置し、昭和と令和の東京大会の象徴として継承します。さらに、今大会は本区に集積する文化、芸術の魅力を国内外に発信するとともに、文化の裾野を広げる絶好の機会であるため、「たいとう文化発信プログラム」に基づき、文化施策を展開します。
 7月21日には、オリンピックの聖火ランナーが台東区内を駆け抜けます。また、パラリンピックの聖火リレーも本区で実施することが決定しています。開催都市東京の一員として、大会の成功に向け尽力し、そこで生まれた感動やこれまでの取り組みを、地域の活性化や区民生活の向上につなげてまいります。

まちづくりの推進について
 昨年策定した「都市計画マスタープラン」では、「浅草地区」や「根岸・入谷地区」などを、「まちづくり推進重点地区」として位置づけており、魅力あるまちづくりを一層推進していくために、ビジョンの策定に向けた基礎調査を実施し、地域の方々とともにまちづくりの方向性を検討します。
 また、同じくまちづくり推進重点地区である「上野・御徒町地区」は、多くの来街者が訪れる一方、まちの高低差や動線が複雑であり、回遊性の向上を図る必要があることから、「上野地区まちづくりビジョン」を策定し、「杜の文化とまちの賑わいが共演する舞台 上野」を将来像に掲げ、取り組みを推進します。

災害対策について
 昨年の台風第19号上陸の際、初めて自主避難所を開設するなどの対策を講じましたが、十分な対応が図れなかった部分もあったため、避難所の運営や災害対策本部の体制などについて検討し、風水害時の対応の更なる強化を図ります。
 また、自助・共助の強化に向け取り組んでいる避難行動要支援者の個別支援計画作成及およびコミュニティ防災の構築については、モデル実施の結果を踏まえ、取り組みの本格化・拡大化に向け、更なる検討を進めます。
 都市防災機能の強化などを図るために、無電柱化の推進に向けて、区の基本的な考え方となる「無電柱化推進計画」を策定するとともに、浅草1丁目や谷中3丁目の区道について、無電柱化の整備に向けた予備設計に着手します。

令和2年度予算案について
 本区の財政状況は、歳入では、特別区民税が増となるものの、特別区交付金は、地方税を国税化して再配分する不合理な税制改正によって減となっており、今後もそのマイナスの影響により大きく減収となることを危惧しています。
 一方、歳出では、子育て支援の充実や待機児童対策、教育環境の整備、高齢者・障害者に係るサービスと施設の充実、低所得者への支援、災害対策の強化、区有施設の保全や長寿命化への対応など、様さまざま々な行政需要が増大していることから、今後より一層の健全な財政運営を推進していかなければなりません。
 予算編成にあたっては、「予算編成方針会議」において、区政の課題や財政状況などについて全庁的な意識の共有化を図り、区民福祉の向上に向け、必要な取り組みに対して重点的に予算配分を行いました。

⑴ あらゆる世代が生涯にわたって成長し輝くまちの実現
 児童虐待を未然に防ぐためには、虐待の兆候がある家庭の早期発見と支援を行うことが重要であることから、支援が必要な家庭の児童を対象としたショートステイ事業を実施します。
 また、国際化が進展する今日においては、子供の頃から外国語の学習や異なる文化の理解に主体的に取り組むことが重要であり、小学6年生では、体験型英語学習施設における様さまざま々な英会話プログラム体験、中学2年生では、外国語指導助手を配した実践的な英会話プログラムを新たに実施し、英語活用の意欲向上を図ります。
 平成27年度から実施している、「アスリートから学ぶ Let‘sEnjoy スポーツ」を、東京2020大会100日前イベントとして内容を充実して開催し、大会に向けた機運醸成を図ります。また、区内の小学生を対象としたボッチャの交流大会を開催し、障害者スポーツの推進を図るとともに、リバーサイドスポーツセンター陸上競技場の大規模改修に向けた設計調査を実施し、スポーツができる環境の更なる充実に取り組みます。

⑵ いつまでも健やかに自分らしく暮らせるまちの実現
 台東病院は、高齢者の慢性期医療を担う拠点病院として、地域にとって必要不可欠な病院です。開設から約10年が経過し、一部機器にも経年劣化がみられることから、先日入れ替えが完了したMRIに続いて、来年度はCT及およびX線TV装置を更新します。
 また、受動喫煙の防止を図るため、公衆喫煙環境の整備をはじめ、施設管理者への指導・助言など、たばこを吸う人も吸わない人も誰もが過ごしやすい空間の創出に向け取り組みます。
 障害者の意思疎通については、様さまざま々な社会的障壁があり、社会全体で解消に向け取り組む必要があるため、「東京都台東区手話言語の普及及び障害者の意思疎通の促進に関する条例」を本定例会に提出するとともに、タブレット端末による遠隔手話通訳を新たに導入するなど、障害者が安心して暮らせる地域社会の実現を図ります。
 さらに、高齢者福祉の一層の充実に向け、旧竜泉中学校跡地において、「(仮称)竜泉二丁目福祉施設」を整備します。

⑶ 活力にあふれ多彩な魅力が輝くまちの実現
 本区が誇る江戸文化の魅力を発信・継承する江戸ルネサンス事業について、来年度は「江戸をたずねる」と題して、区内の文化資源を活かした事業を実施し、新たな魅力創出につなげます。
 また、東京2020大会の開催で来街者の増加が見込まれる時期に合わせて「(仮称)江戸たいとうショップ」を開設し、皮革関連製品などの販売・情報発信をすることで、地域産業の魅力を国内外に広く知っていただけるよう取り組みます。
 さらに、音響体感装置を配した演奏会など、障害の有無にかかわらず、誰もが楽しめるアートイベントを開催することで、相互の理解を深めるとともに、区民が文化に触れる機会の充実を図ります。
 本区には年間約5千600万人もの観光客が訪れており、本年も更なる増加が予想されることから、外国人観光客のマナー向上のための普及啓発を強化するなど、誰もが安心して快適に観光することができる環境の整備を推進します。

⑷ 誰もが誇りや憧れを抱く安全安心で快適なまちの実現
 バリアフリー基本構想の評価結果を踏まえ、区内全域で更なるバリアフリー化が図られるようバリアフリー基本構想を改定し、誰もが安全で快適に生活できるまちの実現に向けた取り組みを推進します。
 また、災害対策については、今後の自然災害に備え、現在避難所に配備している蓄電池の更新に加えて新たに大容量のものを配備することで、避難された方々のスマートフォンの電源を確保するなど、避難支援体制の充実を図ります。
 東京2020大会に向けて、花を慈しむ心を育み、心豊かでうるおいのあるまち台東区を世界にアピールするため、花の心プロジェクトを推進してきました。大会本番を迎えるにあたり、浅草文化観光センターの外壁を朝顔で彩るほか、区内主要駅構内に朝顔をモチーフとしたラッピングシートを設置するなど、様さまざま々な形の花による装飾を実施します。

⑸ 多様な主体と連携した区政運営の推進
 本区における外国人人口は増加傾向にあり、今後もこの傾向は続くことが見込まれることから、本区における多文化共生の基本的考えや具体的な取り組みを示す「多文化共生推進プラン」の策定に向けて意識調査などを実施し、「多文化共生の地域社会」の実現を目指します。
 また、区民サービスの向上及および業務効率化などの観点から、区の業務について、RPA(ロボットによる業務自動化)の導入に向けた実証実験を行っており、来年度は対象業務を新たに3業務追加し、運用面の課題について検証を行うなど、本格導入に向けた取り組みを進めます。


【電子申請】
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