「abさんご」開催のご案内
ページID:218012275
更新日:2025年9月10日
舞台作品「abさんご」
黒田夏子の芥川賞受賞作品『abさんご』×現代演劇×コンテンポラリーダンス×能
黒田夏子の小説『abさんご』を、現代演劇の演出家(西尾佳織)×コンテンポラリーダンスのダンサー(木村愛子、増田美佳)×能役者(清水寛二)が舞台作品として上演します。
『abさんご』の物語はシンプルです。登場するのは「子」「親」「家事がかり」の三人。親と二人きりの水入らずで暮らした子の幸福な幼少期から、戦後の混乱と経済的逼迫により生活が徐々に傾き、そこに家事がかりが現れて親子の蜜月が終わり、やがて家事がかりが親の配偶者の地位を得て親の死ぬまでが、時系列の順はバラバラに、回想の形で描かれます。全15編のエピソードで構成される『abさんご』から、今回は〈解釈〉の一編を上演します。
この小説の特徴は、なんと言っても文体にあります。
おもてぐちがしまっていたので建てもののうらがわにまわっていった者は, かつて埋めた食べがらのしんが果樹となってほそい幹ながら十七さいのたけをはるかにこえたあたりに白い花冠をともしているのや, 使うのをやめてひさしい戸外での煮炊き装置にさしかけられた仮屋根の, いつの秋からともしれない朽ち葉の積もりなどとめぐりあった.
黒田夏子『abさんご』〈解釈〉より
私たちは一般的に、「誰が+どうした」つまり「主語が+述語した」という形式の文に慣れていると思うのですが、『abさんご』においては、「おもてぐちがしまっていたので建てもののうらがわにまわっていた者は」といった調子で、主語が述語(動詞)の集積として現れます。つまり物語が、人間を基準とするのではなく、出来事の側から書かれているのです。
でも本当は、こっちの方が生きものの本来見ている世界だったのではないかしら?
例えばGoogleMapsを使って、私たちは自分の身体を離れた上空から鳥観図的に世界を把握して、目的地とそこまでのルートを把握してから動くことに慣れてしまっています。でも本当は、地に足のついた虫の目で、咲く花を見上げたり、そこに射す光を感じたり、ふと立ちのぼった匂いから急に遠い記憶が蘇ったり、そうした瞬間瞬間の相互性の中で世界を把握しているのではないでしょうか?
『abさんご』は、そんな原初的な記憶と存在のありようへと私たちを立ち返らせてくれる作品です。この世界を、今回はコンテンポラリーダンスと能を足場とする3人のパフォーマーの身体と声で、立ち上げていきます。
公演詳細
日時
2026年3月13日(金曜日)12:00
3月14日(土曜日)12:00/15:00
3月15日(日曜日)12:00/15:00
※開場は開演の30分前
会場
旧平櫛田中邸(東京都台東区上野桜木2丁目20番3号)
定員
各25名
料金
2,500円
予約開始
2025年12月半ばを予定
原作・出演 ほか
原作:黒田夏子『abさんご』(文藝春秋社)
構成・演出:西尾佳織(鳥公園)
出演:木村愛子(Eine Fiege)、清水寛二(銕仙会)、増田美佳
ドラマトゥルク:小田幸子、山本浩貴(いぬのせなか座)
空間構成:中村友美
進行・広報管理・宣伝美術:奥田安奈・五藤真・鈴木哲生(以上鳥公園)
当日運営:青田亜香里
演出助手:萩庭真
主催:西尾佳織、木村愛子
助成:令和7年度台東区芸術文化支援制度、公益財団法人セゾン文化財団
関連企画
研究会「能における曖昧な主体」
『abさんご』の公演に先駆けて、創作プロセスを観客の方々に公開・共有する目的で、能の研究会を実施します。
なぜ能か?というと、『abさんご』における語りの文体の特殊さが、能におけるシテや地謡の主体の曖昧さ(語っているのが誰なのかが確定できない部分がある)と通じるように思っているためです。
当日は、本企画のドラマトゥルクの一人である小田幸子(能狂言研究家)を講師に迎え、レクチャー+質疑応答・ディスカッションを行います。
能に触れたことがない方も、ぜひお気軽にご参加ください!
日時
2025年10月19日(日曜日)13:00~15:30
会場
浅草駒形会議室(東京都台東区駒形1丁目12番10号駒形茜日伸ハイツ11階1105号室)
定員
15名
参加費
500円
講師
小田幸子(能狂言研究家)
予約受付開始
9月19日(金曜日)9:00
ご予約はこちら(外部サイト)から
主催・お問合せ
西尾佳織
Eメール:absango.project@gmail.com
関連情報
お問い合わせ
文化振興課担当(芸術・芸能支援)
電話:03-5246-1328
ファクス:03-5246-1515
